相談事例

父の死亡から約1年後に遺言の存在を知り、遺留分侵害額請求を検討したケース

ご相談者様の状況

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  • 相談者:50代男性
  • 主な相談:遺留分侵害額請求と期間制限への対応

相談内容

Aさんの父は、亡くなる前まで農業を営み、土地、建物、農地、預貯金、株式などの財産を所有していたと考えられました。Aさんの母は父より先に亡くなっており、Aさんには姉がいました。

Aさんは、父や姉と10年以上連絡を取っておらず、父の葬儀にも参列していませんでした。父が亡くなったこと自体は、死亡当日に姉から電話で知らされていましたが、相続について話合いをしたことはなく、遺言書があることも知りませんでした。

父の死亡から約1年が経過した頃、姉から、遺言書があることを知らされましたが、その内容はすべての遺産を姉に相続させるというものでした。

Aさんは、父の遺言書の内容を前提として、遺留分を請求することができるのではないかと考え、弊所へ相談されました。

※本記事に記載している「相談時にお伝えした内容」は、ご相談時に確認できた事情や資料を前提とするものであり、当事務所が本記事をご覧の方の個別の事案について法的な見解を示すものではありません。事情によって判断や結論が異なる場合がありますので、具体的な事案については弁護士へご相談ください。

相談時にお伝えした内容

1 遺留分侵害額請求には期間の制限があること

遺留分侵害額請求権は、相続が開始され、遺留分を侵害されていることを知った時から1年間行使しないと、権利自体が消滅します。また、相続開始から10年を経過した場合にも権利行使ができなくなります。

Aさんは父の死亡を約1年前に知っていましたが、遺言書の存在や、自身の遺留分が侵害されている可能性を知ったのは姉から連絡を受けた時点であるとのことでした。もっとも、期間の起算点は具体的な事情によって争いになる可能性があるため、資料を確認したうえで早急に対応する必要があることを説明しました。

2 権利行使の意思表示を早めに行うこと

期間の経過によって権利を失うことを避けるため、遺留分を侵害している可能性のある相手方に対し、遺留分侵害額を請求する旨の意思表示を早めに行うことが重要です。

本件では、遺言書や遺産の全容を確認できていない段階であっても、請求の意思があることを内容証明郵便等で通知する方法を検討するようお伝えしました。通知を送付する相手方や文面は、遺言書の内容を確認したうえで決める必要があることも説明しました。

3 遺言書の内容を確認すること

遺留分が侵害されているかを判断するには、まず、父の遺言書の有無と内容を確認する必要があります。Aさんは姉から遺言書があると聞いただけで、現物を見ておらず、公正証書遺言か自筆証書遺言かも分からない状況でした。

そこで、姉から遺言書の写しを取り寄せることや、必要に応じて公正証書遺言の検索等を行うことを案内しました。また、誰がどの財産を取得する内容になっているのか、遺言執行者が定められているかなども確認する必要があると説明しました。

4 生前贈与を含め、遺産の全体像を調査すること

遺留分侵害額を計算するには、土地や建物だけでなく、農地、預貯金、株式、現金その他の財産、債務、一定の範囲の生前贈与などを整理する必要があります。

Aさんは父と長期間連絡を取っておらず、財産の管理状況も把握していませんでした。そのため、遺言書のほか、固定資産評価証明書、登記事項証明書、預貯金や有価証券に関する資料などを収集し、財産目録を作成することが必要であると説明しました。

5 希望する解決内容を整理すること

Aさんは、土地や建物は残したいという気持ちがある一方、農地は取得せず、遺留分については現金で受け取りたいとの希望でした。遺留分侵害額請求は、原則として金銭の支払いを求める手続であることを説明しました。

もっとも、実際の解決に当たっては、遺言の内容、財産の評価、相手方の支払能力などによって進め方が異なります。まずは権利行使の意思表示と資料収集を行い、その後に具体的な請求額や解決方法を検討する方針をお伝えしました。

担当弁護士の所感

被相続人が亡くなったことを知っていても、遺言書の存在や内容を知らず、しばらくしてから遺留分の問題が判明することがあります。遺留分侵害額請求には期間の制限があるため、相続開始から時間が経過している場合は、遺産の調査が完了するのを待たず、まず権利行使の意思表示が必要かを早急に検討することが重要です。

また、他の相続人が遺留分を請求していても、その請求によって自分の権利まで当然に保全されるわけではありません。遺言書の内容、財産の全体像、他の相続人が取得した財産や生前贈与、交渉の状況を確認し、自分の立場で期限と請求額を整理する必要があります。

相続人間で長期間連絡を取っていない場合には、資料の収集や相手方との連絡に時間がかかることがあります。遺言の存在や遺留分侵害の可能性を知った段階で、早めに弁護士へ相談することをお勧めします。

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