弁護士 秋吉一秀
1.はじめに
令和6年4月から、岡崎市において「養育費に関する公正証書作成費等補助金」制度が導入されます。当該制度は、養育費の取り決めを公正証書で行う場合の公正証書作成費用や、養育費に関する調停を申立てする際の諸費用について、3万円を上限に岡崎市から補助金が支給されるものになります。
2.対象者
岡崎市内に居住しており、交付申請時に配偶者がおらず、20歳未満の児童を現に扶養している方が対象です。
3.補助金の支給される対象
(1)公正証書の作成費等
相手方が養育費を支払わない可能性がある場合、養育費の支払い義務があることを明確にし、強制執行手続きを簡易に行う目的で、公正証書を作成することがあります。その際、公証人に対して、手数料を支払う必要があります。また、戸籍謄本等が必要になるため、その取得費用もかかります。
本制度では、公証人に支払う手数料及び公証役場から提出を求められた資料(戸籍謄本等)の取得費用について、3万円を上限として、補助金が支給されます。
(2)家庭裁判所の養育費に関する調停費用等
離婚に伴い、養育費の支払いを求める場合、家庭裁判所へ夫婦関係調整(離婚)調停を申し立てることが多いです。また、養育費のみを定める場合には、養育費請求調停を申し立てることがあります。夫婦関係調整(離婚)調停の申立てには、1,200円分の収入印紙を家庭裁判所へ納める必要があります。養育費請求調停では、子ども1人にき、1,200円分の収入印紙が必要です。また、戸籍謄本や、切手(相手方へ郵送するため)も必要となります。
本制度では、養育費に関する取り決めをした調停(夫婦関係調整(離婚)調停を含む)であれば、その調停の申立てにかかった諸費用(収入印紙代、切手代、戸籍謄本等の取得代)について、3万円を上限として、補助金が支給されます。
夫婦関係調整(離婚)調停も補助制度の対象になっているため、当該制度の対象範囲はかなり広いものになります。
4.補助金の交付申請
公正証書を作成した日や、家庭裁判所において調停ないし審判が成立した日の翌日から6か月以内に、岡崎市長に対し、必要書類を準備したうえで、申請書を提出する必要があります。期間制限が6か月と短いため、注意が必要です。
詳しくは、岡崎市のHPをご参照ください。
https://www.city.okazaki.lg.jp/1100/1104/1129/p040314.html
5.おわりに
当該制度は、対象者及び対象範囲が広く、補助金額も上限が3万円のため、夫婦関係調整調停であれば、家庭裁判所へ支払う諸費用について、実質的に自己負担なく調停を行うことができることになります。なお、当該制度は、令和9年3月31日に廃止予定となっています。当該制度の利用について、積極的にご検討されてみてはいかがでしょうか。