パートナーシップ・ファミリーシップ制度とは
令和4年4月1日より、条例による「パートナーシップ・ファミリーシップ制度」が県内で初めて、岡崎市で始まりました。
パートナーシップ制度とは、性別などにかかわらず、お互いをパートナーとして、相互の協力により継続的な共同生活を行っている、または行うことを約束した関係にあることを自治体に届け出た場合、受理証明書などを交付する制度です。(岡崎市の場合、岡崎市役所東庁舎2階の社会文化部多様性社会推進課窓口にて対応しています。)
また、ファミリーシップ制度は、お二人のほかに、家族として暮らしている子どもがいる場合で、その子どもを含む家族の関係性の届出に対して、受理証明書などを交付する制度です。
法律上の配偶者として扱われるものではないため、相続等の法的な権利が発生するわけではありません。
しかし、この制度により、パートナーシップの関係のある方の「要介護認定の申請」、「市民病院での入院面会・診療説明」、「救急車への同乗」等が認められ親族と同様に取り扱われることができます。
岡崎市では、SDGsの目標の一つ「ジェンダー平等の実現」と同様、本市の各施策に関わる重要な課題であるため、令和4年3月定例会で条例を改正し、各種行政サービスの適用拡大や事業所・関係団体との連携により、制度の浸透や、性別などにかかわらず、誰一人取り残さないまちづくりに取り組まれているそうです。
(岡崎市パートナーシップ・ファミリーシップ制度について詳しくはこちら)
日本の法律では、同性同士の結婚は認められていませんが、近年LGBTQや、SDGsなどの問題が身近に取り上げられるようになり、岡崎市の様に、パートナーシップ制度の条例を制定する自治体も増えてきています。
それに伴い、パートナーシップ制度で関係性を証明した方との関係解消に関するトラブルも増加の傾向にあるようです。
特に、考えられるのが、不貞慰謝料請求や財産分与請求の問題です。
パートナーシップ関係上の不貞慰謝料請求
パートナーシップ制度により証明を受けた同性カップルの一方が、不貞をした場合には、慰謝料請求できるのでしょうか。
結論としては、「パートナーに慰謝料を請求できる可能性はある」です。
東京高等裁判所の令和2年3月4日の裁判例では、同性同士の夫婦関係同様の関係について「婚姻に準ずる関係から生じる法律上保護される利益を有する」との判断をし、不貞慰謝料請求を認めました。
もっとも、同性同士の同居関係があったとしても当然に不貞慰謝料請求ができるわけではありません。
そもそも法律上保護される程度に夫婦関係同様の関係性があるのか、また、そのような関係があるとしても、パートナーの不貞行為を立証できるか等の問題が生じえます。
そのため、「パートナーシップ契約」を事前に締結しておくことにより、法的保護・紛争発生した際のリスク回避を図ることができるかもしれません。
パートナーシップ契約とは、異性間の婚姻に発生する民法上の効果を参考にしながら、パートナー関係を法律上の契約という形で結ぶことを言います。ここに、貞操義務や財産分与、関係解消時のルールなどの記述を残しておくことで、関係解消の際に、揉める可能性が減らせるメリットが考えられます。
このような契約を締結する場合の具体的内容については専門家に相談されることも一つの方法かと思います。
パートナーシップ関係上の財産分与請求
法律上の婚姻でないパートナーシップの場合に、関係解消の際の財産分与はどうなるのでしょうか。
同じく、法律上の婚姻でない内縁関係の場合には、「婚姻に準ずる関係」と考えられるため、内縁関係解消の際には、財産分与の規定が類推適用され、内縁解消に伴う財産分与請求が認められます。
他方で、パートナーシップ関係にある同性カップルが関係を解消する場合については、条文上規定されておらず、また内縁関係の場合のような判断をした裁判例がないことから当然には認められません。
最近では、横浜家庭裁判所において令和4年2月10日に「財産分与を認めない」との判断が出されたとのニュースが報道されました。
もっとも、財産分与は、夫婦が協力して築いた財産を離婚にあたり清算することを主目的とする制度なので、同性同士であっても、夫婦と同様に協力して財産を築いたと言える場合には、財産分与制度の趣旨に合致することから、今後認められることがあるかもしれません。
おわりに
以上でご紹介させていただいたとおり、近年、パートナーシップ制度が各自治体で広まっており、今後、よりパートナーシップ関係を結ぶ方が増える可能性があります。
そうしますと、夫婦関係と同様の問題が生じることがあると思いますが、法的な難しい問題が絡んできます。
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