ご相談者様の状況・ご相談内容
- 依頼者A社 (株式会社)
- 相手方Bさん(40代男性)
事案
Bさんは、A社に10年以上勤めていましたが、問題行動が多く、A社はどのように対応するかを悩んでいました。
あるとき、Bさんがほかの社員に対して暴言を吐いたことをきっかけに、暴言を吐かれた社員が辞表を提出しようとしたため、A社内での協議の結果、Bさんを即日解雇することにしました。
解雇から数日後、BさんからA社に対し、解雇は無効であり、労働者としての地位が存在することを確認する旨の内容証明郵便が届いたため、A社の役員であるCさんが弊所へご相談にいらっしゃいました。
解決内容
Cさんから詳しくお話を伺ったところ、BさんはA社の社用車を無断で使用したり、立て続けに事故を起こしたり、ほかの社員に暴言を吐く等の問題行動を5年以上続けていたことがわかりました。
A社は、問題が起こるたびにBさんを口頭で注意してきましたが、問題が解決することはありませんでした。そこで、今までの問題行動と今回のほかの社員への暴言を総合的に考慮した結果、Bさんを即日解雇したとのことでした。
担当弁護士が事情の詳細を聞き取ったところ、Bさんの問題行動が事実であり、ある程度立証可能であることがわかりました。
しかし、A社はBさんの問題行動について、口頭で注意をし続けてきましたが、懲戒をしたことはありませんでした。また、口頭での注意であったため、注意をした物的な証拠もありませんでした。
このような状況での即日解雇は、立証可能性が低いことや解雇という手段の相当性の観点から社会通念上の相当性を欠く解雇として、労働契約法16条により無効と判断される可能性が高いものでした。
したがって、A社としてはあくまで解雇は有効であることを前提として解決金を支払う形での合意退職を目指す方向でBさんと協議しました。
交渉を進めていくと、Bさんは解雇を争うものの、ある程度の解決金が受け取れれば、和解に応じるとの姿勢を示してきました。
その後、協議の結果、A社から解決金として80万円を支払う形で合意退職する形となりました。
担当弁護士の所感
本件のように、一見解雇に相当な理由がある事案であっても、労働契約法上直ちに解雇とすると法的に問題が生じることがあります。
会社として解雇の判断をする前に、証拠が十分にあるか、また懲戒処分の相当性を検討した上で対応する必要があります。
また、退職の方向で協議する場合、退職金ないし解決金名目で支払う金銭について源泉徴収を行うか等の税務上の問題が生じることがあります。
解雇有効性、税務上の問題等検討事項が多いことから、早期の段階から慎重に対応する必要があります。
解決期間
4ヶ月