相談事例

事例2 共働きの夫婦で、自宅を相手方が取得する代わりに預貯金について財産分与を求めたいと相談されたケース

ご相談者様の状況

男性アバター

  • 相談者:50代男性
  • 職業:公務員
  • 相手方:50代女性・公務員
  • 婚姻期間:約20年
  • 子ども:2名

相談内容

Aさんは、妻と約20年間婚姻生活を続けていましたが、夫婦間の会話がほとんどなくなり、数年前から家庭内別居に近い状態となっていました。

Aさんは、妻に離婚を申し入れました。当初、妻は子どもが未成年であることを理由に離婚に応じませんでしたが、その後、条件次第では離婚に応じるとの意向を示しました。親権については、妻が持つことで双方の意向はおおむね一致していました。

一方、財産分与については、夫婦が住んでいる自宅の取扱いや、婚姻期間中に形成された預貯金などをめぐって意見が分かれていました。

自宅の土地・建物は夫婦の共有名義で、不動産業者の査定では、住宅ローン残高を上回る価値があると見込まれていました。

妻は、離婚後も自宅に住み続け、住宅ローンを引き継ぎたいと希望していました。

その後、妻に代理人弁護士が就き、離婚調停を申し立てたとの連絡が届きました。Aさんは、調停への対応方法や、自宅、預貯金、退職金などをどのように整理して財産分与を求めればよいかについて、弊所へ相談されました。

※本記事に掲載している「相談時にお伝えした内容」は、ご相談時に確認できた事情や資料を前提とするものであり、当事務所が本記事をご覧の方の個別の事案について法的な見解を示すものではありません。事情によって判断や結論が異なる場合がありますので、具体的な事案については弁護士へご相談ください。

相談時にお伝えした内容

1 双方の名義の財産を確認する必要があること

財産分与では、原則として、婚姻中に夫婦の協力によって形成した財産が対象となります。

夫婦の一方の名義となっている預貯金であっても、婚姻後の収入から形成されたものであれば、財産分与の対象となる可能性があります。

もっとも、正確な財産分与額を計算するためには、夫婦双方の預貯金、有価証券、保険の解約返戻金、退職金などの内容と金額を明らかにする必要があります。

2 自宅の価値は、査定額と住宅ローン残高を基に検討すること

住宅ローンの残っている自宅については、不動産の時価と住宅ローン残高を確認する必要があります。

本件では、不動産の査定額が住宅ローン残高を上回る、いわゆるアンダーローンの状態と見込まれていました。

妻が自宅を取得して住み続ける場合には、不動産の査定額から住宅ローン残高を差し引いた実質的な価値を基に、Aさんへ支払われる財産分与額を検討することになると説明しました。

ただし、不動産の査定額については業者によって差が生じることがあるため、複数の査定を取得することが考えられます。

3 住宅ローンの名義変更は、夫婦間の合意だけではできないこと

妻が自宅を取得し、住宅ローンを引き継ぐことで夫婦間の合意が成立しても、それだけで住宅ローンの債務者を変更できるわけではありません。

住宅ローンの借換えや債務者の変更には、金融機関の承諾や審査が必要です。妻の収入だけで借換えが可能か、保証人を求められるかなどは、金融機関の判断によります。

そのため、財産の帰属について一定の見通しが立った段階で、金融機関と協議する必要があることを説明しました。

4 退職金や保険なども確認する必要があること

夫婦双方に将来退職金が支給される見込みがある場合、婚姻期間に対応する部分が財産分与の対象となることがあります。

また、生命保険や学資保険に解約返戻金がある場合、その金額も財産分与の対象となる可能性があります。

本件では、夫婦双方に退職金が見込まれていたほか、保険、有価証券などもありました。そのため、自宅と預貯金だけでなく、財産全体を一覧にして、夫婦それぞれの財産総額を比較する必要があることを説明しました。

5 子ども名義の預貯金について

子ども名義の預貯金であっても、そのすべてが当然に財産分与の対象外となるわけではありません。

祖父母などから子ども本人へ贈与された金銭であれば、子どもの財産として扱われるのが通常です。

一方、夫婦が自分たちの収入を子ども名義の口座で管理していただけであれば、実質的には夫婦の共有財産として、財産分与の対象となる可能性があります。

そのため、入金の経緯や通帳の取引履歴などを確認する必要があることを説明しました。

6 調停では財産資料をそろえて主張する必要があること

本件では、離婚そのものについては双方に離婚する意向があり、親権についても大きな対立はありませんでした。主な争点は、財産分与の内容でした。

もっとも、妻名義の預貯金額などが明らかになっていなかったため、相談時点では正確な財産分与額を算定できない状態でした。

そこで、離婚調停では、夫婦双方の財産資料の開示を求め、自宅、預貯金、有価証券、保険、退職金、自動車、各種ローンなどを一覧にしたうえで、Aさんが受け取るべき財産分与額を主張していく必要があることを説明しました。

担当弁護士の所感

夫婦双方に安定した収入があり、生活費の負担方法が明確に分かれていた場合でも、名義だけを基準に財産分与の対象を判断することはできません。

一方が住宅ローンや生活費を負担し、他方が自身の収入を貯蓄していた場合、その貯蓄も夫婦の協力によって形成された財産と評価される可能性があります。

また、自宅に住宅ローンが残っている場合、財産分与額を計算するだけでは問題は解決しません。自宅を誰が取得するか、住宅ローンを誰が負担するか、金融機関から債務者変更や借換えの承諾を得られるかについても、併せて検討する必要があります。

本件のように、自宅、預貯金、有価証券、保険、退職金など複数の財産がある場合には、財産の全体像を明らかにしてから分与額を検討することが重要です。

離婚調停を申し立てられた場合には、自身の名義の財産だけでなく、相手方名義の財産や住宅ローンなどの負債についても資料を収集し、早い段階で整理することをお勧めします。

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