ご相談者様の状況

- 相談者:50代男性
- 職業:会社員
- 主な検討手続:自己破産
相談内容
Aさんは会社員として勤務し、妻と賃貸住宅で暮らしていました。銀行やクレジットカード会社など複数の債権者に対し、合計1,000万円以上の債務を負っていました。
Aさんは、転職時にまとまった退職金を受け取ったことや、海外赴任を経験したことなどから金銭感覚が変わり、飲食店での多額の支出やインターネットでの買物が増えたと話していました。また、暗号資産取引でも多額の損失を出していました。
その後、クレジットカードのリボ払いを利用するようになり、利用限度額に達すると、銀行系ローンなどから借り入れてカードの支払に充てるようになりました。
しかし、再びカード利用額が増え、毎月の返済額が収入を大きく上回る状態となり、返済を続けることができなくなりました。
Aさんには多数の預金口座や暗号資産の取引履歴があり、配偶者名義の口座への送金も確認されていました。そこで、自己破産によって生活を立て直したいとして、手続の見通しや、申立てまでに必要となる準備について弊所へ相談されました。
※本記事に記載している「相談時にお伝えした内容」は、ご相談時に確認できた事情や資料を前提とするものであり、当事務所が本記事をご覧の方の個別の事案について法的な見解を示すものではありません。 事情によって判断や結論が異なる場合がありますので、具体的な事案については弁護士へご相談ください。
本件では、借入れによって別の支払を補う状態となり、預金も減少していたため、任意整理などによる継続返済だけでなく、自己破産を前提とした準備を進めることを検討しました。
相談時にお伝えした内容
1 現在の収入が高くても、返済可能性は債務額と家計全体から検討すること
Aさんには毎月一定の収入がありましたが、債務総額は1,000万円以上に達し、毎月の返済額も収入を大きく上回っていました。 収入があるという一事情だけで自己破産を利用できないと決まるものではなく、債務総額、毎月の返済額、生活費、保有資産などを踏まえて、返済を継続できる状態かを検討する必要があることを説明しました。
2 浪費や暗号資産取引の経緯を詳しく説明する必要があること
飲食店での多額の支出などの浪費や、投機的な取引によって著しく財産を減少させたり、過大な債務を負担したりした事情は、自己破産の免責手続で問題となる可能性があります。
もっとも、そのような事情があるからといって、直ちに免責が認められないと決まるわけではありません。 Aさんには、支出や借入れが増えた時期、使途、暗号資産取引による入出金と損失の内容、相談後の生活改善状況などを、取引履歴やカード明細に基づいて正確に整理する必要があることを説明しました。
3 管財事件となる可能性を見込んで準備すること
本件では、浪費や暗号資産取引の経緯に加え、多数の預金口座、海外口座の有無、配偶者名義口座への送金など、財産や資金の流れについて確認すべき事項が複数ありました。
そのため、破産管財人が選任され、財産状況や借入れの経緯について調査が行われる管財事件となる可能性があることを説明しました。 また、管財事件となる場合には、弁護士費用とは別に裁判所へ納める費用が必要となるため、申立てに向けて計画的に資金を準備する必要があることもお伝えしました。
4 預金口座や暗号資産などを漏れなく開示すること
自己破産を申し立てる際には、現在利用していない口座を含め、保有する預金口座や暗号資産取引所の口座などを漏れなく申告し、取引履歴を提出する必要があります。
Aさんには、海外赴任時に利用していた口座が閉鎖済みであるか、国内のネット銀行や暗号資産取引所に残高がないか、配偶者名義口座への送金がどのような目的で行われたものかを確認し、資料をそろえるようご案内しました。 財産や取引を意図的に隠したものでなくても、未開示の事項があれば手続に影響する可能性があるため、不明な点も含めて弁護士へ伝えることが重要であると説明しました。
5 クレジットカードの利用を止め、支払方法を変更すること
Aさんは多数のクレジットカードを保有し、家族カードも利用されていました。また、家賃、公共料金、保険料、通信費などの支払にもクレジットカードや借入先の銀行口座を利用していました。
そこで、受任前に本人カードと家族カードの利用を止めて解約し、公共料金などの継続的な支払を、振込みまたは借入れのない金融機関の口座振替へ変更する必要があることを説明しました。 給与振込口座についても、口座が利用できなくなる可能性を考慮して、変更の要否と時期を確認しました。
6 家計を見直し、申立て後も継続できる生活に改めること
自己破産は、債務の整理だけでなく、その後の生活を立て直すための手続でもあります。Aさんの家計には、飲食・遊興費、インターネット上のサービス、家族分の通信費、ペット関連費など、見直しが必要な支出がありました。
Aさんには、飲食店での多額の支出を直ちにやめること、不要な定額サービスを解約すること、家族が負担すべき費用を整理すること、ペット関連費を可能な範囲で抑えることなどをご案内しました。 あわせて、毎月の収支を記録し、申立費用を積み立てながら、改善後の家計を継続できる状態にする必要があることを説明しました。
ご相談後の対応
初回相談後、Aさんから預金口座やクレジットカードの利用履歴などの資料をご提出いただき、債務額、財産状況、暗号資産取引、配偶者名義口座への送金などについて追加で確認しました。
再相談では、カードと家族カードの解約、給与振込口座や家賃・公共料金等の支払方法の変更、不要な契約の見直し、暗号資産取引所の残高と取引履歴の確認など、受任前に行うべき事項を整理しました。
また、管財事件となる可能性を見据え、債権者一覧表と財産目録を作成するための資料を引き続き準備していただき、申立費用の積立てと家計改善を進めたうえで、自己破産の申立てに向けた契約を検討することとなりました。
担当弁護士の所感
収入が比較的高い方であっても、リボ払いや借換えを重ねることで毎月の返済額が膨らみ、収入だけでは返済できない状態に陥ることがあります。 借入れによって別の支払を補うようになった場合には、早い段階で債務総額と家計を整理し、適切な手続を検討することが大切です。
浪費や暗号資産取引による損失がある場合には、その経緯や金額を正確に説明し、同じ状況を繰り返さないための家計改善に取り組む必要があります。 また、多数の口座や取引所を利用している場合には、使っていないと思っている口座も含めて確認し、財産や取引履歴を漏れなく開示することが重要です。
返済が難しくなった後もカードの利用や借入れを続けると、債務がさらに増え、手続も複雑になる可能性があります。 返済のための借入れが必要になった時点や、毎月の返済額が収入を圧迫し始めた時点で、早めに弁護士へ相談することをお勧めします。










