弁護士法人名古屋総合法律事務所 岡崎事務所所属の弁護士 大野です。
これまでの記事では、名古屋家庭裁判所岡崎支部(以下本稿では「岡崎支部」と呼びます)で実施される離婚調停の大まかな流れ等をお 伝えしてきました。(前回はこちら)
最終回である本稿では、離婚事件の当事者にとって大きな悩みとなる、「配偶者と顔を合わせずに話し合いができるのか?」という点について、お伝えしていきたいと思います。
6.配偶者と顔を合わせずに話し合いができるのか?
まず結論から申しますと、『当事者から裁判所へ事前に事情をきちんと説明しておけば、裁判所はひととおりの配慮をしてくれますが、相手(配偶者)と鉢合わせるリスクを完全に回避することは難しいため、最終的にはご自身で十分注意して行動していただく必要もある』ということです。
岡崎支部内における対策
岡崎支部では、当事者同士が建物内で鉢合わせになるリスクを減らすため、調停当日の当事者の集合時間を20分程度ずらして設定するケースが殆どです。
(※非DV案件で話合いが順調に進んでおり、すぐに面接の交代が予想される状況である場合は、当事者を同時刻に集合させるケースもあります。)
また上記と同じ目的で、当事者の待合室は1階・2階それぞれに指定される運用となっています。
例えば申立人が「1階申立人待合室」だった場合、相手方は「2階相手方待合室」、申立人が「2階申立人待合室」だった場合、相手方は「1階相手方待合室」という形です。
以前の記事でも紹介したように、離婚調停では交互面接方式が基本です。
岡崎支部での調停の際は、上記のように別フロアの待合室にいる当事者を、調停員が都度迎えに行き、調停室まで移動して面接を行うことになるため、当事者が鉢合わせになるリスクは比較的低いといえます。
岡崎支部外における対策
一方、調停の時間外における裁判所の出入りについて、裁判所が当事者の行動をコントロールすることは困難です。
例えば、申立人妻が先の集合時間を指定され、時間通りに裁判所へ向かったところ、後の時間を指定されたはずの相手方夫が、妻よりも早く裁判所へ来て、ロビーで妻を待ち構えていた・・・等の事態もあり得るところです。
これは私が担当する離婚調停で実際に経験したケースなのですが、夫が集合時間よりずっと早く裁判所へ来ていた理由が明らかでない以上、「夫があえて集合時間より早くやって来て、妻を待ち構えていた」とまで証明することは困難でしたので、私は当時の担当調停委員へ事情を説明し、相談した結果、次回以降の調停期日では夫側を先の集合時間としてもらい、妻側を後の集合時間に指定してもらうこととしました。
この方法であれば、妻の集合時間より早く裁判所へやって来た夫と、裁判所ロビーで鉢合わせになる等のリスクを回避できるため、裁判所の配慮には助けられました。
まとめ
このように、調停で当事者が鉢合わせにならないようにするには、予め裁判所へきちんと事情を伝え、事前調整を行うことが重要です。
代理人弁護士がいれば、裁判所との調整は勿論、万が一当事者が鉢合わせてしまった場合でも、その場で相手と口論になったり相手から付き纏われる等のトラブルを回避できる可能性が高まります。
離婚調停を考えつつも、配偶者と顔を合わせず進めたい希望が特に強いのであれば、この点で代理人を選任するメリットも大きいと思います。
最後に
さて、本連載では岡崎支部での離婚調停というテーマで、離婚調停の手続の流れや、実務上の留意点等についてお伝えしてきました。
西三河地区にお住まいで離婚調停を考えている皆様にとって、本連載の記事が少しでもお役に立つことができましたら幸いです。