はじめに
弁護士法人名古屋総合法律事務所 岡崎事務所所属の弁護士 大野です。
前回に引き続き、名古屋家庭裁判所岡崎支部(以下本稿では「岡崎支部」と呼びます)で実施される離婚調停のあれこれについて、弁護士の目線からお伝えしたいと思います。
(全5回を予定しています。第3回はこちら)
5. 調停の終わり方
これまで調停の流れについての概要を説明してきましたが、調停終了の手続きについてケースごとにご紹介していきます。
⑴ 夫婦で離婚の合意ができた場合
当事者が話合いを続けた結果、財産関係の清算、(未成年のお子様がいらっしゃる場合)お子様の今後について、夫婦間で過不足なく合意が出来た場合は、調停成立の手続きがなされることになります。
調停成立の際は、これまで後ろに控えていた裁判官、当事者双方(及び代理人弁護士)、裁判所書記官、今まで面接を担当してきた調停委員が一堂に会し、合意内容に基づき作成された調停条項を読み上げ、双方の最終意思確認を行います。
十分に双方の合意が確認できないまま調停成立の手続きに移行することは基本的にありませんから、特にトラブルがなければ、双方の意思確認の後、調停成立となるでしょう。
逆に言えば、納得できない部分を抱えたまま調停成立に応じてしまうと、後に引けない状況になりかねません。話が煮詰まってきた時点で気になることがあれば、必ず事前に調停委員やご自身の代理人弁護士へ相談しておくべきでしょう。
※成立した調停調書には確定判決と同じ効力があります(家事事件手続法268条1項)。
⑵ 夫婦で離婚の合意が出来なかった場合
当事者で話合いがまとまる見込みがない場合、「調停不成立」という形で調停を終了させることが考えられます。
仮にあなたが離婚を求める側だった場合、家庭裁判所から調停不成立の証明書を取得し、離婚裁判へ移行することが検討されます。第3回でも言及しましたが、裁判に移行して離婚を求めるには、事前に調停を経る必要がある※のです。
※調停前置主義:詳しくは離婚サイトへ
ちなみに、以前岡崎支部において、ある調停委員から「調停不成立から1年以上経過しているのであれば、離婚裁判の前に再度調停を申し立てて頂く必要があるのではないか」とのお話を伺ったことがあります。
(あくまでその調停委員さんの個人的見解での発言と思われますので、実際にどうなるかはケースバイケースかと思います。)
離婚裁判への移行を考えるのであれば、調停不成立からどれくらいのタイミングで裁判を起こすかにも注意した方が良いでしょう。
なお離婚について合意できない場合でも「当面の間、夫婦のまま別居を継続する」として、いわゆる「当面別居」で調停を成立させることがあります。
これは「別居を続けるということで双方が合意した」という調停成立の類型であり、調停不成立とは異なるため、離婚裁判に移行することが出来ない可能性が高いです。
仮にあなたが離婚を求められる側(離婚に応じたくない側)だった場合、まずは調停において夫婦関係の円満修復を求めることになりますが、仮に調停不成立で終了すれば相手から離婚裁判を起こされる可能性があるため、最終的に「当面別居」で調停を成立させるよう求めることも選択肢といえます。
⑶その他
申立人側が何らかの事情で、調停を取下げ調停が終了することもあります。
話合いがまとまる見込みがないので仕方なく調停を取り下げる、という選択肢はありますが、取下げの場合も、当面別居と同様、離婚裁判に移行することが出来ない可能性があるので注意が必要です。
他には「調停に代わる審判」や「調停なさず」というケースもあり得るのですが、離婚調停については例が少ないため、ここでは割愛します。
次回は本連載の最終回として、離婚事件の当事者にとって大きな悩みとなる、「配偶者と顔を合わせずに話し合いができるのか?」という点について、岡崎支部の運用や実務上の注意点等をお伝えしたいと思います。
それではまた。