岡崎事務所ブログ

ひき逃げ

はじめに

ひき逃げ

『長く刑務所に入っていたい』そんな理由から、福島県の国道288号線の路上で、清掃活動のボランティア中の男女2人をトラックではね、殺害したとして、殺人などの罪に問われていた事件の被告に対し、福島地裁郡山支部の裁判員裁判が2021年6月24日に、死刑判決を言い渡しました。

トラックを運転していた被告が面識のなかった被害者2人を見つけてUターンし、時速60~70キロまで加速してはね、逃亡した事件、自己中心的で身勝手すぎる理由に事故のニュースを見た時にはにわかには信じられませんでした。

車を運転する以上、誰しも事故を起こす可能性があり、その相手が『人』である場合があることも認識しておく必要があると思います。

今回挙げた事件の被告のように、明確に意思を持って逃げる人はまずいないと思いますが、事故を起こしてしまい、さらに人をはねてしまったとなれば、気が動転して、どうすればいいのか分からなくなってしまう…という状況は想像に難くありません。

道路交通法とひき逃げ

道路交通法第72条第1項には

交通事故が発生した時は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、運転者は、警察官に事故が発生した日時及び場所、事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、事故に係る車両等の積載物並びに事故について講じた措置を報告しなければならない。

と定められています。

気が動転して、どうすればいいか分からなくなった結果、万が一にもその場から立ち去ってしまった場合、この道路交通法72条に違反することとなり、救護義務違反、いわゆるひき逃げとして、厳しく処罰されます。

1. 救護義務違反(ひき逃げ)の罰則

10年以下の懲役又は100万円以下の罰金(道路交通法第117条第2項)

2. 違反点数

違反点数は35点で、これだけで運転免許は取り消され、取消日から3年間は、運転免許の取得が出来なくなります。

3. 具体例

以下に挙げる事例も、ひき逃げに該当してしまうことがあります。

1)非接触の場合

相手方と直接の接触がなくても、相手の直前を通過したり接近したりした時に相手が急ブレーキをかけたことで転倒してしまった場合などに、停止せず現場から立ち去ってしまうと、救護義務違反に当たることがあります。

自分が相手の転倒等に影響を与えたかどうか判断がつかない場合でも、まずは相手の様子を確認し、必要に応じて救急車を呼ぶ等の対応をとる必要があります。

2)相手が「大丈夫」と言っている場合

交通事故の現場でお互いに話をし、相手が「大丈夫」と言ったことから現場を離れた場合であっても、後から、相手が身体に痛みを感じて病院を受診し、警察に診断書を提出すると、救護義務違反に当たることがあります。

つまり、負傷の有無は、医師でなければ判断できないため、相手の「大丈夫」を「負傷がない」と解釈して立ち去ってしまうと、後から救護義務違反となってしまう可能性があるのです。

特に、相手が子どもや高齢者の場合には、驚きや、恥ずかしさなどから、怪我の状態をよく確認せず、「大丈夫」と答えてしまうことが多いので、相手の「大丈夫」の言葉を鵜呑みにせず、仮に相手が立ち去ってしまっても、後記のように報告義務の問題があるため、必ず警察には報告(子どもの場合は保護者への連絡も)するようにしましょう。

3)相手の過失が大きい場合

路上飛び出しや信号無視など、事故の主な原因が相手方にある場合に、「自分は悪くない」と勝手に判断して、救護措置等を行わずに現場を立ち去ると、事故の過失責任とは別に、救護義務違反が成立します。

たとえ相手の一方的な過失で起こった交通事故であったとしても、法律に定められた通りに、直ちに運転を停止して、相手の怪我を確認し、救急車を呼ぶ等の対応をしましょう。相手が「救急車は必要ない」と言った場合でも、後記のように報告義務の問題があるため、必ず警察には報告してください。

交通事故の際に、相手の救護を怠ると、悪意がなくても「ひき逃げ」となってしまうので、たとえ急いでいても、自分で安易な判断をせず直ちに必要な救護措置※を取るようにしましょう。

※とるべき救護措置の程度について、過去の裁判例では、単に救急車を呼ぶだけではなく、「医者に対する治療依頼に手落ちがないかを確かめる等万全の救護措置を講じてこそ自己に課せられた救護義務を完遂したものといいうる」と判示するものがあり(福岡高裁S37.7.7)、高度の義務が課されていることに注意が必要です。

また、救護事務違反(ひき逃げ)として処罰されない場合でも、警察への報告を怠れば「報告義務違反(事故不申告)」として処罰される場合があります。軽微な事故であったり、例え相手が「大丈夫」等と言っていたりしても、警察への事故報告を怠ってはいけません。

※3か月以下の懲役、又は5万円以下の罰金が科せられる場合があります。(道路交通法第72条第1項後段、第119条第1項第10号)

さいごに

弁護士法人名古屋総合法律事務所岡崎事務所は、交通事故被害者の方の味方です。

「初めての事故でどうしたら良いか分からない」「相手の保険会社から提示された金額に納得できない」「事故後の症状や痛みが続いているのに、治療費打ち切りの連絡が来た」そんな時には、まず、交通事故・後遺障害についての専門知識や多くの相談経験のある弊所の弁護士にご相談ください。

また、示談交渉がこじれてから弁護士を探すよりも、事故発生直後に弁護士に相談する方が、治療にも専念でき、納得いく解決にたどり着く可能性が高まりますので、できるだけ早い段階で弁護士に相談しましょう。

   
↑ページトップへ