岡崎事務所ブログ

亡くなった親族の飼っていたペットと相続問題

1. はじめに

相続の法律相談を受けていると、
「亡くなった親の飼っていたペットはどうすればいいのでしょうか?」
というご質問を受けることがあります。

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本稿では、亡くなった親族の飼っていたペットと相続に関係する問題について、ご紹介したいと思います。

2. ペット(動物)の民法上の扱いと相続

まずは前提論ですが、ペット(動物)は民法上、「物」として扱われるものと解釈されています(民法85条等)。

したがって、亡くなった親族(被相続人)が飼っていたペットは、特別な事情がない限り、被相続人が所有する「物」ですので、被相続人の死亡に伴い、遺産として相続の対象になります。

そうすると、相続人が1名しかいない場合は、(相続放棄をしない限り)その相続人がペットの所有権を引き継ぐということでよいのですが、相続人が複数名おり、かつ「遺言書」でペットの取得者の指定がなされていない場合、「遺産分割協議」によりペットを誰が取得するかを定めるまでの間は、全相続人の共有物という扱いになります(民法898条)。

3. ペットの世話にかかった費用はどうすればいい?

前述のとおり、相続人が複数名いて、誰がペットを引き取るかが決まるまでの間は、ペットは全相続人の共有物となりますが、遺産分割協議が終わるまでの間も、ペットには餌やりが必要でしょうし、病気等で治療を受けさせなければならない場合もあります。

ペットの取得者が決まるまでの間に、ペットの世話等のために支出した費用は、相続財産の維持管理に要した費用、つまり「相続財産に関する費用」(民法885条)に該当すると考えられるため、遺産の現預金等から支出してもらうことが考えられます。

万一他の相続人が、ペットに関する費用を遺産から支出することに難色を示した場合、共有物の管理費用に関する規定(民法253条)を根拠に、他の相続人に対し、相続分に応じた費用の償還を求めることになりそうです。

なお上記は、ペットの取得者が決まるまでの間にかかった費用の話ですので、遺産分割協議でペットの取得者が決まったら、それ以降は、取得者が自己の責任と費用負担で、ペットの世話をしていくことになります。

4. ペットの面倒をみる余裕がない場合は?

亡くなった親族が生前可愛がっていたペットでも、相続人が必ずしも面倒をみていける状況にあるとは限りません。(例えば相続人がペット飼育不可の物件に住んでいた場合、どうすることもできないでしょう。)

他に遺産がない場合、相続放棄をしてしまうのも選択肢ですが、仮に相続放棄をしたとしても、他の相続人等に引き渡すまでの間は、「自己の財産におけるのと同一の注意をもって」遺産を管理する義務がありますから(民法940条)、次の引き取り手に委ねるまでの間は、きちんと世話をしてあげる必要があります。

相続人が複数おり、全員がペットの引き取りを望まない場合は、全相続人の合意のもとで、専門業者に引き取ってもらう等して、ペットを処分せざるを得ないでしょう。

なおペットは民法上「物」ではありますが、「動物愛護管理法」という特別法によって保護されています。

いたずらにペットの世話を放棄したり、面倒がみられないからといって勝手に外へ逃がしたり(遺棄)した場合、懲役や罰金等、重い罰則が科される可能性があります。くれぐれもご注意ください。

※ペットの飼育については、動物愛護管理法以外にも、各市町村の条例等で規制がされている可能性がありますので、確認しておいた方が良いでしょう。

5. さいごに

現在ペットを飼われている(高齢の)方で、「自分が亡くなったら誰にペットの世話をしてもらおうか…」とお悩みの場合は、元気なうちに、相続人である親族とよく相談しておくか、自分の死後、誰にペットの面倒をみてもらいたいか、遺言書を作って明記しておくことをお勧めします。

ペットと相続に関してお悩みの方は、是非一度、相続に強い弁護士へご相談ください。

   
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