弁護士 渡邊佳帆
1.調停と管轄
名古屋総合法律事務所は、離婚事件や相続事件など、家事事件を多くご依頼いただいております。家事事件においては、紛争解決の手段として、家庭裁判所において、第三者である調停委員に間に入ってもらって話し合いをする調停がよく用いられます。この調停ですが、どの家庭裁判所に申し立てをすればよいのかは決まっています。その決まりを「管轄」といいます。
2.対象者
⑴離婚調停
離婚調停においては、調停を申し立てられた相手方の住所地を管轄している家庭裁判所が管轄になります。婚姻費用の額の決定や支払を求めるために申し立てる婚姻費用分担調停も同じです。管轄についての合意があれば合意がある家庭裁判所になりますが、合意があることは少ないです。
先に離婚調停が係属しており、後から婚姻費用分担調停が申し立てられた場合やその逆の場合には、たとえ両者の管轄が違っても、先に係属していた離婚調停を扱っている家庭裁判所において、婚姻費用分担調停も同時に行われることが多いです。そうすれば、同じ期日に、同じ調停委員のもとで、婚姻費用分担調停と離婚調停について協議することができるので、当事者にとって簡便だからです。
⑵遺産分割調停
遺産分割調停においては、相手方の住所地を管轄している家庭裁判所が管轄になります。相手方が複数人いる場合は、そのうちの誰かの住所地を管轄している家庭裁判所です。当事者の合意がある場合は、その家庭裁判所になります。
3.管轄の裁判所が遠い場合
最近では、調停において電話会議やウェブ調停の方式が採用され、遠方からも調停に参加できるようになりました。したがって、相手方の住所地が遠くても、調停が申し立てられるようになりました。そのため、弁護士に依頼する際は、打合せ等のしやすさから、自分が住んでいる場所に近いところに事務所がある弁護士に依頼する方が多いように思えます。
現在は、離婚調停の場合は、調停成立の際には電話・ウェブでの参加は認められず、出頭しなければならないのですが、ウェブ会議で離婚調停ができるよう家事事件手続法が改正されました。近年中に施行される見込みです。
4.愛知県の管轄
愛知県は、名古屋家庭裁判所の本庁の他に半田支部・一宮支部・岡崎支部・豊橋支部の4つの支部があります。弊所にご依頼いただく際には、本庁・半田支部・一宮支部の管轄であれば、丸の内事務所・金山事務所・一宮事務所のうち、ご依頼者様にとって利便性のある事務所に、岡崎支部・豊橋支部の管轄であれば岡崎事務所にご依頼いただくことが多いです。
1つ目の理由は、調停に出頭する際に、移動時間に応じて出張料金をいただいているからです。岡崎事務所に所属する弁護士が家庭裁判所岡崎支部に出頭しても出張料金はかかりませんが、丸の内事務所に所属する弁護士が家庭裁判所岡崎支部に出頭すると、その分出張料金がかかります。
2つ目の理由は、当該家庭裁判所の管轄内に依頼者様の住所地があることが多いので、打合せの際により依頼者様の住所地の近くにある事務所に来ていただくことができ、依頼者様の利便性にも寄与することになるからです。
5.調停に出頭することや、対面で打合せをすることのメリット
電話会議やウェブ会議の方法で調停に参加することもできるので、管轄にとらわれることなく、全国の事件を受任する弁護士事務所もあるようです。
しかし、家庭裁判所に出頭して調停に参加することのメリットはあるように思います。調停委員と対面して調停に臨むほうが、調停委員の表情が見え、反応が分かります。また、早口であるとか、温厚であるというような、調停委員の性格もつかむことができます。聞き間違いのリスクも減ります。
また、対面での打合せができる弁護士に依頼することのメリットも大きいです。必要な資料の共有手段として一番確実なのは、原本を事務所にご持参いただき、事務所でコピーをとることです。資料の写真等を送っていただくこともありますが、どうしても見づらくなってしまいます。弁護士と依頼者様のやり取りも、メールや電話より対面での会話の方がたくさんの情報を共有できるように感じます。
どの弁護士に依頼するかを決める際は、対面での打合せができる距離にいる弁護士かどうかや、管轄をもとに決めるのも一つの手です。