解決事例

事例3 交渉の結果、高額な賠償額で和解が成立したケース

ご相談者様の状況

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  • Aさん(依頼者)

事案

Aさんは勤務先における職務中に親指を挟み、痛みで仕事に支障をきたすようになったため、親指を挟んだ日(事故日)から二週間後に病院に行きました。

その後も痛みは続き、注射等の治療を続けましたが症状は改善せず、事故日から約2年後、主治医が症状固定(それ以上治療しても症状は改善しないとの医師の判断が下りること)と判断し、その後はギプス等を巻く保存療法のみとなりました。

Aさんは、弊所に勤務先に対する損害賠償請求を依頼なさいました。

なお、Aさんは、労働基準監督署により障害等級12級12号が認定されていました。

解決内容

本件においては、①過失相殺、②症状固定の日を、主治医が判断した日とするべきなのか、それとももっと前に症状固定をしたとみなすべきなのか、③後遺障害の等級は14級か12級か、④基礎収入はいくらかが争点になりました。

① 過失相殺について

過失相殺は、怪我をした側にも過失があった場合に、その分を考慮して、損害賠償額から引くという考え方です。
こちらは、Aさんに過失はなく、全額の賠償が認められるべきだと主張し、勤務先は、Aさんには少なくとも2割の過失があると主張しました。それをうけてこちらは、裁判例をもとに、Aさんに過失がないと主張しながらも、早期解決のため、過失相殺は1割とすることで合意しました。

② 症状固定について

症状固定が問題になる理由は、労災における損害項目の一つである傷害慰謝料(入通院慰謝料とも言います)が、通院期間に応じて定まるからです。また、本件においては、Aさんは事故を受けて従前行っていた仕事ができなくなったことが発覚して以降、仕事を休んでいました。この場合、仕事を休んだ日から症状固定日までの期間が、事故によって休業をやむなくされた期間と認められ、1日あたりの基礎収入に休業日数をかけて算出する額が休業損害として認められます。したがって、症状固定がいつなのかは、損害額に大きくかかわることでした。

本件においては、Aさんご本人の話を聞き、労基に開示請求した決定書に記載された主治医の診療録を読み、治療の効果を見極めるために期間を要したことがわかりました。また、医療の専門家である主治医が事故日から約2年後に症状固定との診断をしたのは動かない事実でした。これらを改めて説明し、休業期間は、事故日から主治医が症状固定と判断した日までの期間とすることで合意ができました。

③ 後遺障害等級について

後遺障害等級は、後遺障害による逸失利益(後遺障害がなければ得られたであろう利益)、後遺障害慰謝料(後遺症が残ったことに対する慰謝料)の額に影響します。
仮に労災手続きの過程で後遺障害認定がされていたとしても、裁判所は労災の判断に拘束されません。そのため、労災手続きでの後遺障害等級よりも下位の等級が妥当であるとの主張がされることが多くあります。

本件においても、相手方からは後遺障害等級14級が妥当である旨の主張がされました。

そこで、相手方の主張の妥当性を判断するために、弁護士とAさんとで医師面談を実施し、後遺障害等級についての検討を行いました。

障害等級12級が認定されるためには、他覚的所見によって医学的に証明できなければなりません。今回は、Aさんが治療を開始してからMRIを撮るまでの間に数週間経過してしまっていたため、その時には骨折があったか否かが画像上明らかではないということが判明しました。

この事実を前提とすると、裁判に至った場合には後遺障害等級14級に下がる可能性があります。そのため、裁判外の交渉においては、労災での後遺障害等級の認定結果にこだわらず、ある程度の譲歩を行う前提で交渉を行うことといたしました。

交渉の結果、後遺障害慰謝料と逸失利益については、後遺障害等級12級と14級の中間額での合意に至りました。これにより、本件は訴訟を回避し、和解をすることができ、かつ14級の場合よりも高い賠償金を得ることができました。

④ 基礎収入について

本件においては、Aさんは就職してすぐの被災であったため、正確な年収が不明という特殊事情がありました。そこで、賃金センサスの金額をもとにした基礎収入により交渉を行いました。

以上のような様々な争点がありましたが、交渉の結果、和解が成立しました。こちらが一定程度譲歩の姿勢を見せることで、想定される判決内容よりも有利な結果が得られたように思います。

担当弁護士の所感

労働災害は交通事故の損害賠償と考え方が似ており、弊所が培ってきたノウハウにより妥当な賠償額を獲得するための交渉が可能です。

しかし、交通事故は多くの場合に保険会社が損害の算定に必要な資料を共有してくれるのに対し、労働災害は労働基準監督署に開示請求をする、依頼者の通院先に23条照会をするなどして、自分たちで資料を集めなければならないという大変さがあります。また、相手会社によっては資金力が限られており、そのあたりを考慮しつつ交渉しないと、和解がまとまらないと感じました。しかし、雇用主に配慮する姿勢を見せた結果、判決よりも有利であろう賠償額となりました。

解決期間

受任から1年10か月

   
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