ご相談者様の状況

- 相談者:60代女性
- 主な相談:遺留分侵害額請求への対応
事案
Aさんの夫が亡くなり、妻であるAさんと、夫の子ども5人が相続人となりました。
子どものうち3人はAさんとの間の子で、2人は夫と前妻との間の子でした。
夫は、生前に公正証書遺言を作成していました。遺言には、預貯金を5人の子どもへ平等に分け、自宅の土地・建物をAさんに相続させることが定められていました。
預貯金については、遺言の内容に沿って各子どもへ分配されていました。
遺言書にしたがった遺産分割をしたあと、Aさんは相続した自宅不動産を売却しました。
その後、夫と前妻との間の子から、遺留分侵害額請求をする旨の内容証明郵便が届きました。
Aさんは、遺留分をどのように計算するのか、夫と前妻の間の子とどのように連絡を取ればよいのか分からず、自分で説明するよりも弁護士を通じて対応したいと考え、弊所へ相談されました。
※本記事に記載している「相談時にお伝えした内容」は、ご相談時に確認できた事情や資料を前提とするものであり、当事務所が本記事をご覧の方の個別の事案について法的な見解を示すものではありません。事情によって判断や結論が異なる場合がありますので、具体的な事案については弁護士へご相談ください。
相談時にお伝えした内容
1 相続人と公正証書遺言の内容を確認すること
本件の相続人は、妻であるAさんと夫の子ども5人の合計6人でした。前妻との間の子どもも、Aさんとの間の子どもと同じく夫の相続人となります。
まず、公正証書遺言の内容、遺言に基づいて各相続人が取得した財産、夫の死亡時に存在した財産と債務を整理する必要があると説明しました。預貯金の分配に関する資料や、不動産の売買契約書、売却費用が分かる資料などを確認するようご案内しました。
2 遺留分は遺産全体を基に算定すること
遺留分侵害額は、相続開始時の積極財産だけでなく、一定の範囲の生前贈与を加え、債務を控除した財産額を基礎として算定します。不動産だけを取り出して計算するのではなく、預貯金などを含めた遺産全体を確認する必要があることを説明しました。
また、実際の遺留分侵害額は、遺留分を算定するための財産額や、請求者が遺言によってすでに取得した財産などを踏まえて計算することをお伝えしました。
相談時に確認できた不動産の売却額と預貯金額を前提に試算し、請求者がすでに取得した預貯金を差し引いた場合の概算額をAさんへお示ししました。もっとも、正式な金額を確定するには、財産と債務に関する資料を精査する必要があることも説明しました。
3 不動産の評価額は公示価格だけで決まるものではないこと
遺留分の算定における評価について当事者間で合意できない場合には、相続開始時の不動産の評価が問題となります。
本件では、不動産がすでに第三者へ売却されていたため、実際の売却価格は時価を検討するうえで重要な資料になると考えられました。
また、売却に伴う費用や税金をどこまで考慮するかについては、法的な評価と当事者間の合意による解決とを分けて検討する必要があります。相手方との協議により、一定の費用等を考慮した金額で合意することも考えられるとお伝えしました。
4 内容証明郵便を受け取った後の対応を整理すること
内容証明郵便による請求を受けた場合には、まず、請求者、請求の対象、請求額の根拠、回答期限などを確認します。内容証明郵便が届いたことだけで、記載された金額の支払義務が確定するわけではありません。
一方で、遺留分侵害額請求には期間の制限があり、相手方が権利を行使した時期も重要となります。そのため、届いた書面と封筒を保管し、どの相続人から、いつ、どのような請求を受けたのかを整理するようご案内しました。
相手方へ回答する際には、計算の前提が確定していない段階で支払義務や金額を安易に認めず、資料を確認したうえで回答内容を検討する必要があることを説明しました。
5 合意する場合は対象と解決範囲を明確にすること
遺留分侵害額について協議がまとまった場合には、支払金額、支払時期、支払方法だけでなく、合意の対象となる相続や請求の範囲を明確にした書面を作成することが重要です。
本件では、夫と前妻との間の子どもが複数いたため、誰から請求を受けているのか、各相続人との間でどこまで解決するのかを区別して整理する必要があるとお伝えしました。
6 請求見込額と弁護士費用も踏まえて対応を選ぶこと
遺留分侵害額の見込額によっては、弁護士費用が請求額に近くなることもあります。そのため、請求額や争点、相手方との直接のやり取りによる負担、今後の紛争を避けたいという希望などを総合して、弁護士へ依頼するかを検討する必要があると説明しました。
費用を抑える方法として、当事者間で金額に合意できる場合には、合意内容を書面にする部分のみを専門家へ相談することも選択肢となり得るとお伝えしました。
ご相談後の対応
Aさんは、相手方との直接のやり取りを避け、遺留分侵害額の計算と回答を弁護士へ任せたいと希望され、再度相談に来所されました。再相談では、相談時点の資料を基にした計算結果をお渡しし、委任契約と受任通知の内容を確認しました。
担当弁護士の所感
公正証書遺言があっても、遺言の内容によっては、配偶者や子どもなどから遺留分侵害額請求を受けることがあります。請求書に金額が記載されていても、その金額がそのまま支払うべき金額になるとは限りません。
特に、不動産を相続した後に売却している場合には、不動産をどの時点のどの価格で評価するか、売却費用や税金をどのように扱うかが問題となることがあります。また、請求者が遺言によって預貯金などを取得している場合には、その取得額も確認する必要があります。
遺留分侵害額請求を受けたときは、不動産だけでなく、預貯金、生前贈与、債務などを含めて遺産全体を整理することが重要です。ご不安の際には、早い段階から弁護士へ相談することをお勧めします。










