岡崎事務所ブログ

姑からの嫌がらせ!慰謝料請求できますか?

弁護士 大野貴央

  嫁姑問題

円満な結婚生活を送るには、夫婦間の仲が重要であることはもちろんですが、配偶者の親族(義理の両親、兄弟姉妹等)との関係も大きな影響があります。

特に、妻と、夫の母親(姑)との間のトラブル、いわゆる嫁姑問題が原因で、夫婦が離婚にまで至ってしまうケースは少なくありません。

本稿では、嫁姑問題を含む、配偶者の親族とのトラブルと、離婚の関係について、解説していきます。

「配偶者の親族との不仲」は、法律上の離婚原因になるか?

  配偶者の親族との不仲

民法770条1項各号には、法律上の離婚原因が列挙されています。

しかし、「配偶者の親族との不仲」を理由に離婚できるかについて、直接の定めはありません。

そこで、「配偶者の親族との不仲」という事情が、同5号の

その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

に該当するかが問題となります。

条文を素直に読めば、「配偶者の親族との不仲が深刻で、結婚生活を続けられなくなった場合」は、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するとも思えます。

しかし日本の民法では、

「婚姻関係が破綻して、回復の見込みがないとき」に離婚が認められる

という破綻主義が採用されています。

上記「婚姻を継続し難い重大な事由」とは、婚姻関係(=夫婦関係)の破綻を意味すると解されています。

そうすると、法律上の離婚原因が認められるには、「配偶者の親族と不仲である」という事情だけでは足りません。

配偶者本人との関係(婚姻関係)が著しく悪化したとまでいえる必要があると考えられます。

 

「姉と妻が不仲!もう離婚したい」過去の裁判例

過去の裁判例では、「妻と小姑(夫の姉)の不仲が原因となり離婚が争われた」ケースで、

夫婦間に固有の紛争があったわけではないこと等の理由から、夫婦間の婚姻関係は完全に破綻しているとは認められない

として、夫からの離婚請求を認めなかったものがあります(東京高判昭和60年12月24日)。

  「姉と妻が不仲!もう離婚したい」過去の裁判例

もっとも、同裁判例は、小姑から嫌がらせを受けていた妻の方から離婚を求めたものではなく、夫が離婚を望み、妻の方が婚姻関係の継続を望んでいたという事例でした。

仮に、妻から離婚請求をしていた場合は、結論が異なった可能性があります。

なお法律上の離婚原因は、配偶者の一方が離婚を望んでいない場合に、裁判で離婚が認められるため必要となる要件です。

 
 
女性専門家

夫婦間で離婚の合意ができるのであれば、通常の協議離婚が可能です。夫婦間で離婚の合意ができるのであれば、通常の協議離婚が可能です。

 

離婚原因「義理の親族による嫌がらせ」に対して慰謝料請求できる?

それでは、配偶者の親族による嫌がらせ等が原因で離婚することになってしまった場合、嫌がらせをしてきた親族を相手に、慰謝料を請求することはできるのでしょうか。

  離婚原因「義理の親族による嫌がらせ」に対して慰謝料請求できる?

そもそも慰謝料の請求とは、
・相手方の不法行為(民法709条)によって生じた
・精神的苦痛の損害賠償を求めるものです。

配偶者の親族に慰謝料請求をするためには、嫌がらせ等の行為が「不法行為」と評価される程に悪質である必要があります。

したがって、日常的な嫌がらせ行為のみを理由として慰謝料請求を行うことは難しいように思われます。

ただし、日常的な嫌がらせ行為の積み重ねにより、精神疾患を発症してしまった等の事情があれば、精神的苦痛の損害が明白かつ甚大といえます。

慰謝料請求が認められる可能性があるかもしれません。

「離婚に至らしめた」点についてだったら慰謝料請求できる?

  「離婚に至らしめた」点についてだったら慰謝料請求できる?

では、「離婚に至ってしまったこと自体」を理由とする慰謝料請求はどうでしょうか。

離婚自体は、あくまで婚姻関係の当事者である夫婦の合意に基づいてなされるものであります。

たとえ配偶者の親族による嫌がらせ等が離婚に至った一因になっていたとしても、配偶者の親族に対して直接離婚慰謝料の請求を行うことは難しいのが原則といえます。

<過去の判例>舅からの暴言で追い出された…

  過去の判例舅からの暴言で追い出された

もっとも、過去の判例を踏まえますと、
配偶者の親族が婚姻関係を破綻させようと積極的に働きかけたような事情があれば、
例外的に、配偶者の親族に対する慰謝料請求が認められる可能性があります。

最高裁昭和38年2月1日判決は、

舅(夫の父)が妻(内縁)に暴言を吐き、妻を家から追い出した

というケースです。

舅が妻の追い出しにおける主導的役割を演じており、社会観念上許されるべき限度を超えた内縁関係に対する不当な干渉にあたる

ことを理由に、舅に不法行為責任を認めました。

考え方としては、「浮気相手が破綻させた」場合と同じ

なお本題から逸れますが、

不貞が原因で離婚に至った場合に、不貞相手に「離婚」慰謝料を請求できるか

が争われた近時の最高裁判決(最判平成31年2月19日)があります。

第三者(不貞相手)が当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うのは、

当該第三者が、

単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず
「当該夫婦を離婚させること」を意図して、その婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして、当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られる。

と判示しています。

  考え方としては、「浮気相手が破綻させた」場合と同じ

同最高裁判決の考え方は、離婚を決めるのはあくまで当事者である夫婦の判断によることを前提に、

離婚に至った責任を第三者が負う場合は、

当該第三者が婚姻関係を破綻させようと積極的に働きかけたような場合

に限られる、とするものであります。

すなわち、前記昭和38年判決と共通するロジックかと思われます。

それぞれの事情によって進め方は変わってきます。

  それぞれの事情によって進め方は変わってきます。

嫁姑問題をはじめとする配偶者の親族とのトラブルは、時として婚姻関係に深刻な影響を与え、離婚を検討しなければならない場合もあります。

そのようなケースで
・離婚協議をどのように進めることがいいのか、
・配偶者の親族に対してどのような法的措置を取り得るのかは、
具体的な事情によって様々です。

まずはお気軽に、離婚分野の専門家である弁護士へご相談いただいた方が良いでしょう。

   
↑ページトップへ