岡崎事務所ブログ

不倫慰謝料の請求を受けた場合の対処について

弁護士 田村淳

今回は、不倫慰謝料の請求を受けた場合の対応について説明します。

1 はじめに

最近、不倫慰謝料の請求を受けて困ってご来所される方が多くいます。
内容証明郵便で請求を受けた場合、不貞行為の事実と請求金額、振込先等が書いてあり、一定期間以内に振込みがなされない場合には法的措置をとる等と書かれていることが通常です。

日常生活を送っている限り、内容証明郵便を受け取ることはないことから不安になることと思います。また、不倫行為を行っていたという後ろめたさ等から、請求された金額をそのまま振り込む人もいます。

しかし、相手からの請求金額は、裁判例等を前提とすると適正な額でない可能性が高いことから、一度冷静になる必要があります。

2 不貞行為をした場合の法律関係

ある女性が、既婚の男性(夫)と交際関係にあることが男性の妻にばれて、妻から不倫慰謝料(300万円と仮定します。)を請求されているという架空の事例を前提に説明します。

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(1)共同不法行為に該当すること

この事例において、女性の行為(性交渉を伴う交際を前提とします。)は、妻に対する不法行為に該当します。
もっとも、ここで1点注意が必要です。夫の女性との交際は、夫の妻に対する不法行為にも該当するという点です。

すなわち、女性と夫が共同して妻に不法行為を働いているという関係にあるのです。民法上は、このような関係を共同不法行為と呼んでいます。
法律上は、妻は、夫と女性に対して、不倫行為により被った精神的な損害について賠償請求をすることができます。

(2)妻の請求金額について

以上を前提に、妻から請求されている300万円が妥当な金額でしょうか。

不貞行為を働いた場合の賠償額については、不貞行為により夫婦関係が離婚に至ったのか、別居に至ったのか、不貞の回数や期間がどれくらいであったのか等様々な事情を考慮して決定されます。

女性の不貞行為により、妻と夫が離婚に至っておらず、また、不貞行為の期間も数か月であった等の事情であった場合には、300万円との額は高いと思われます。
また、もし夫が婚姻関係にあるとは知らずに交際していたという事情があった場合には、女性の行為には不法行為の要件の一つである「故意又は過失」(民法709条)がないということとなり、女性の負う賠償額は0ということになります。

したがって、具体的な事例において、裁判上妻が請求した場合の適正額がどれくらいなのかという検討をする必要があります。

(3)共同不法行為者間には負担割合があること

また、女性の行為は夫との共同不法行為に該当することは既に述べましたが、女性と夫との間には、責任の割合に応じた負担割合があります。

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負担割合を考慮した場合には、法律上は女性の負担すべき金額は、共同不法行為によって妻に生じた損害のうち、自己(女性)の負担割合に応じた額ということとなります。

この負担割合は、不貞行為の積極性(どちらが積極的に誘ったのか)、立場の相違を利用したか(上司と部下の関係性等)等の事情を考慮して判断されます。

仮に妻の適正賠償額が150万円で、女性の負担割合が4割であった場合、女性が最終的に負担すべき金額は60万円ということになります。したがって、もし女性が妻に150万円全額支払った場合には、女性は夫に対して、60万円を超える部分(90万円)を請求することができます。
この女性の夫に対する請求権のことを、法律上は求償権(きゅうしょうけん)といいます。

したがって、最終的な女性の負担すべき金額を考えるにあたっては、負担割合についても検討する必要があります。

3 示談交渉する場合

相手からの請求額が高い場合、示談交渉をすることによって賠償額を低く抑えることができる可能性があります。

示談交渉をするにあたっては、当該具体的事案における賠償額がいくらなのか、負担割合がどれくらいなのか、という点を裁判例等を前提に知っておくことがとても重要です。それにより、支払うべき適正額がはっきりとしますし、相手を説得する材料ともなるからです。

4 まとめ

今回は、女性が独身であることを前提として説明しました。今回の仮定の事例において、女性も婚姻していた場合、女性の夫も不倫相手に対して慰謝料請求できる権利を有します。

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図で示すとこのようになります。 オレンジ色組の夫婦緑色組の夫婦が登場します。
この場合、女性の不倫行為は、に対する共同不法行為であるとともに、に対する共同不法行為に該当します。

このような場合には、より複雑となり、より慎重に対応していく必要がでてきます。

弁護士が間に入って交渉することで、相手の賠償額を大幅に減額できる可能性があります。
不倫慰謝料の請求を受けた場合には、お一人で悩まずに、弁護士等の専門家にご相談にいかれる方がいいと思います。

弊所では、数多くの不倫慰謝料事件の相談にも乗っていることから、具体的場合における最善な解決案を提示できると思います。

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