弁護士 渡邊佳帆
1.岡崎市シビックセンターについて
名古屋総合法律事務所岡崎事務所は、岡崎市の誇る公共施設、岡崎市シビックセンターまで徒歩2分ほどの場所にあります。
シビックセンター内は大きなコンサートホールや様々な施設があり、冬はイルミネーションで彩られ、夏は夏祭りが開催される地元民の生活に根付いた施設です。
シビックセンター内には公証役場があり、弊所の弁護士も、公正証書遺言の作成においてはもちろんのこと、離婚事件においてお世話になることがあります。
2.離婚事件と公証役場
公証役場が離婚事件においてかかわりを持つのはなぜでしょうか。
それは、離婚の際の和解条項を公正証書の形で残すことがあるからです。
公正証書とは、公証人が公証人法その他の法令に従い法律行為その他私権に関する事実について作成する文書です(公証人法1条1号、26条参照)。
簡単に言えば、公証人という公務員がその権限に基づいて作る文書です。
公正証書の形で和解条項を残すことは、公証役場が条項の書かれた紙を保管してくれるという点も大きなメリットですが、おそらく最大のメリットは、法律上の要件を満たせば、強制執行ができるようになる点でしょう。
3.離婚事件と強制執行
離婚事件においては、裁判外で離婚を成立させる協議離婚の場合、離婚をする際に決めた条件を、和解条項の形で残します。主に財産分与や養育費が挙げられますが、これらは一方がもう一方に支払うことを約束していたとしても、その約束それ自体がお金に変わるわけではありません。
支払うことを約束した側(以下、「債務者」と言います)が約束通りに支払わない場合には、改めて支払いを請求し、それでも支払われなければ裁判を起こして判決をとり、さらに民事執行を申し立て、債務者の給与を差し押さえるなどする必要があるのです。
しかし、民事執行法は、いきなり民事執行を申し立てることができる場合を定めています。民事執行法22条1号から7号に列挙された、「債務名義」という文書がある場合がこれにあたります。
その債務名義の一つが、「金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの」(民事執行法22条5号)なのです。
この、「債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述」は、「強制執行認諾文言」とも言われます。
したがって、誰が誰に財産分与や養育費としていくらをいつどのような方法で支払うという内容の記載がある公正証書に、「○○は、本公正証書による金銭債務を履行しないときは、直ちに強制執行に服する旨陳述した。」というような強制執行認諾文言があれば、養育費などが支払われない場合に強制執行を申し立てることができるのです。
4.離婚条項を公正証書の形で残すかどうか
以上の理由から、和解条項を公正証書の形で残したいのは財産分与や養育費を請求する側であり、支払う側には公正証書の形で残すメリットはあまりないと言えます。
離婚事件においては、協議において離婚が成立する場合、公正証書の形で和解条項を残すか否かも争点になり得ます。
相手方が公正証書の形で和解条項を残すことを拒んだけれども、養育費等を支払われない場合には強制執行の申立てができるようにしておきたければ、離婚調停を申し立てることになるでしょう。
調停の結果合意が成立した条項を記した調停調書は、債務名義になるからです(家事事件手続法268条1項括弧書き、家事事件手続法75条、民事執行法25条)。
5.岡崎市シビックセンターと名古屋総合法律事務所岡崎事務所
名古屋総合法律事務所岡崎事務所は、事務所の場所を移転する前も後も、シビックセンターのご近所にあります。
岡崎事務所の設立からもう5年が経ちますが、様々な事件でシビックセンターに、何より三河地域の皆様にお世話になってまいりました。
今後とも、よろしくお願い申し上げます。