地域の皆様へ

清算価値と不動産と市街化調整区域

1.債務整理において重要な「清算価値」

破産・個人再生等の債務整理においては、清算価値が重要です。清算価値とは、債務者が破産したと仮定した場合に債権者が得られる仮定的な破産配当にあたります(要するに、この人が破産したら債権者はいくらもらえるのか、という話です)。個人再生の場合は、債務を減免し、残った債務を債権者へ弁済することになりますが、清算価値以下の額まで債務総額を減らすことはできません(債権者にとって破産した方がまし、という個人再生はできないということです)。そのため、清算価値が高くなればなるほど、個人再生における弁済額が高くなる可能性があります。

不動産を持っている場合、清算価値に要注意です(不動産を持っているから破産ではなく個人再生にしたい、という方がほとんどですが)。不動産の価値は、名古屋地裁(支部含む)において、土地は固定資産税評価額の2倍、建物は1.5倍で計上する運用がされています。その金額からローン残高を引いても価値が残ってしまうと、清算価値が跳ね上がります。

固定資産税評価額は、毎年送られてくる納税通知書に記載されています。掛け算してびっくり、うわ~これ個人再生無理じゃない?
 ……でも、ちょっと待ってください。

2.そこ、「市街化調整区域」では?

マイホームをお持ちの方の中には、土地・建物どちらも自分で購入した方もいれば、建物は自分で購入したけど、土地は親族のご厚意で貸してもらっている、という方もいるのではないでしょうか。そしてその中には、本当は家を建ててはいけない市街化調整区域にある土地なんだけど、直系3親等以内の方の土地に家を建てさせてもらう場合は例外的に家を建てることが認められる、いわゆる分家住宅を建てた、という方もいるのではないでしょうか。

 

その場合は、その人が土地所有者の親族だから例外的に家を建てることができたのであって、第三者に家を売っても、買った第三者は家を増築したり、家を建て替えたりすることができません。その家を買う気になるかという問題があります(また、そもそも他人の土地の上にある家を買うことについて抵抗はないかという問題もあります)。

 

そのため、市街化調整区域の土地上にある分家住宅は、固定資産税評価額の1.5倍で価値を出してしまうと、実際の価格より高くなる可能性があります。

 

名古屋地裁(支部含む)においては、固定資産税評価額の1.5倍の他に、不動産業者2社の査定書や不動産鑑定士の鑑定書においても不動産の価値を決めることを認めています。もし分家住宅に建物がある方は、査定をとれば家の価値が低くなるかもしれません。

 

ただ、岡崎市においては、「市街化調整区域における立地基準」が制定され、建築後15年以上適正に使用された土地は、分家住宅を一般住宅に用途変更することができてしまうことになったので、長年当該建物に住んでいる方は注意が必要です。他の市町村でも同様の制度がある場合があります。

3.土地を借りている分、建物の価値が上がる

分家住宅の場合、売却できないと言うことで価値は下がりますが、「人の土地の上に住まわせてもらっている」ということで、その分価値がプラスされることになります。

賃貸借の場合、その借地権の価値(借地権価格)は、不動産価格に借地権割合をかけた金額で算定されます。たとえば、1000万円の甲土地があり、甲土地の路線価図における借地権割合が6割の場合、借地権価格は600万円になります。

 

使用貸借(土地を貸してくれている人に賃料を払わず借りている場合)は、土地利用権の価値として、土地の価格の1割を計上します。

 

なお、土地の固定資産税だけを払っている場合は、使用貸借に当たります。

3.地域ごとの特質

私は名古屋市出身ですが、名古屋市において市街化調整区域はほとんどありません(全国的にも珍しいようです)。一方、三河地方ですと、市街化調整区域にお住まいの方が一定数いらっしゃるため、債務整理において地域の特質を把握することの重要性を感じます。

 

弊所岡崎事務所は、弁護士・事務員ともに三河地方と縁が強く、地域の特質にも詳しいです。ぜひ、債務整理のご相談をご検討ください。

 

私も数年岡崎市に住み、三河について少しは知識を蓄えたつもりです。今後とも三河に詳しくなれるよう精進します。

   
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