ご相談者様の状況
- 相談者:Aさん(被害者)
- 相手方:Bさん(加害者)
ご相談内容
優先道路を走行していたAさんが交差点へ進入したところ、左方から同交差点に進入するために一時停止していた相手車両が、突然交差点に飛び出してきたためAさんの車両と衝突したという事案。
Aさんが運転しており、同乗していた妻、子ども(当時0歳)が怪我を負ったため、3名からご依頼を受けました。
交渉の経過
過失割合
本件事故の基本的過失割合は10(依頼者)対90(相手方)でした。
依頼者は、少なくとも5対95でないと納得できないという主張でしたが、相手方は、10対90を譲らないという主張でした。
そこで、実況見分調書を取得し、事故状況を詳しく確認しました。
すると、相手方は、直前まで依頼者車両を発見できていなかったことから、十分に道路状況を確認しないままに交差点へ進入したことが窺われました。
この点を、相手方に主張し交渉したところ、当方の主張が認められる形となりました。
休業損害
専業主婦も家事労働分を金銭評価することが可能であることから、家事労働分の休業損害を主張することが考えられます。
事故態様や当時の生活状況、後遺障害の有無等により、認められる休業損害の程度はケースバイケースであるといえます。
本件では、母親は、事故後幼い子どももいる中で家事をすることができなかったことから、2週間実家に帰省せざるを得ない状況でした。したがって、少なくとも2週間の休業損害は認められるべきであるという主張を行いました。
相手方からは、母親が後遺障害を負っておらず、かつ、医師照会では「就労に問題なし」という回答を得ているという理由から休業損害は認めないという主張でした。
しかし、依頼者には一緒に事故に遭った0歳の子供に加え、もう一人2歳の子どもがいました。後遺障害が認定されてないとはいえ、事故直後は強い頸部痛や腰痛がありました。
したがって、母親が2人の幼い子供の面倒を看ることはとてもできる状況ではありませんでした。
また、母親は、事故の翌日から実家に2週間帰省し、その後病院への通院を再開したこと(したがって、実家に帰省している間の状況を病院側が把握していない)や、保険会社の医療照会も事故から数か月してから行われたものであったため、医師が、事故直後の母親の状況をきちんと理解して「就労に問題なし」と回答したとは考えられませんでした。
したがって、これらの事情を相手方に説明して交渉した結果、当方の主張が全面的に認められました。
評価損
本件事故車両は、購入から1年足らずであり、かつ、走行距離も1万キロに満たない状態のものでした。
そこで、依頼者としては、評価損(事故歴がついたことによる経済的な価値の減少)も主張したいという主張でした。
評価損は、一般的に、修理費用の1割から3割程度認められ得るものですが、訴訟外の交渉ではなかなか認められにくいものであると思われます。
そこで、まずは、自動車査定協会に査定を依頼し、減価額証明書を作成しました。
また、裁判例等も調査をし、本件に妥当する裁判例を用いて交渉材料として使用することとしました。
相手方は、当初は、減価額証明書では直ちに評価損は認められない等という主張も行い、評価損を全く認めないという態度をとり続けていました。
しかし、交渉を続け、最終的には、相手方は全く認めないという主張を取り下げ、修理費用の1割5分程の評価損を認めました。
所感
本件は、争点も多くありましたが、争点ごとに必要な資料を集めて根拠を持って主張出来たことで、当方の主張がおおむね認められた形となりました。
自動車査定協会の減価額証明書があれば直ちに評価損を認めてもらえるわけではありませんが、評価損が発生していることの資料の1つにはなります。
したがって、評価損が疑われる場合には同証明書を取得したり裁判例を引用する等してきちんとした主張を行う必要があると思われます。