ご相談者様の状況

- 相談者:50代男性
- 職業:会社員
- 主な争点:財産分与・婚姻費用・年金分割
相談内容
Aさんは、妻と30年以上婚姻生活を続け、3人の子どもを育ててきました。仕事の転勤をきっかけに家族で転居しましたが、その後Aさんが別の地域へ戻る際、子どもの進学などを考慮して、妻と子どもは従前の居住地に残りました。以後、夫婦は長期間にわたり別居生活を続けていました。
Aさんは、定期的に家族のもとを訪れ、生活費として毎月一定額を送金していましたが、その後、Aさんと妻は、今後同居することは難しいとの認識で一致し、離婚すること自体については双方が同意しました。しかし、財産分与や年金分割などの条件について具体的な話合いが進まず、Aさんは、どのような条件を提示すればよいのか分からない状況でした。
Aさんは、財産分与の対象となる財産をどの時点で区切るのか、離婚成立まで生活費の支払いを続ける必要があるのかについて、弊所へ相談されました。
※本記事に記載している「相談時にお伝えした内容」は、ご相談時に確認できた事情や資料を前提とするものであり、当事務所が本記事をご覧の方の個別の事案について法的な見解を示すものではありません。 事情によって判断や結論が異なる場合がありますので、具体的な事案については弁護士へご相談ください。
相談時にお伝えした内容
1 離婚の進め方と、長期別居が離婚の判断に与える影響
離婚の手続には、当事者間の協議、家庭裁判所での離婚調停、離婚訴訟があります。協議や調停では、夫婦双方が合意すれば離婚できますが、合意できず訴訟となった場合には、法律上の離婚原因が必要です。
裁判で婚姻関係が破綻しているかを判断する際には、当事者の離婚意思、別居に至った経緯、別居期間、夫婦関係を修復できる見込みなどが考慮されます。本件では別居が長期間に及び、双方に離婚の意思があるため、まずは離婚条件を整理して協議による解決を目指し、合意が難しい場合には調停を検討する方法があると説明しました。
2 財産分与の基準時を確認する必要があること
財産分与では、婚姻中に夫婦が協力して形成した財産を清算します。一般に、夫婦の経済的な協力関係が終了した時点を基準として対象財産を確定するため、別居している事案では、別居時が基準となることが多いと説明しました。
もっとも、本件では、転勤や子どもの進学をきっかけに別居が始まり、その後も送金や行き来が続いていました。また、一時的に同居を検討した時期もありました。そのため、当初の別居時から夫婦の経済的協力関係が終了していたのか、その後の事情から別の時点を基準とすべきかが問題となり得ることをお伝えしました。
3 夫婦双方の財産を同じ基準時で整理すること
財産分与を検討するには、基準時に存在した夫婦双方の預貯金、有価証券、保険の解約返戻金、退職金、自動車などを一覧にし、それぞれの評価額や取得時期、取得原資を確認する必要があります。
妻の財産状況が不明であったことから、Aさんの財産だけで分与額を決めるのではなく、妻にも同じ基準で財産を開示してもらう必要があることを説明しました。
4 離婚成立までの婚姻費用を検討すること
夫婦が別居していても、離婚が成立するまでは、収入の多い側が相手方へ婚姻費用を支払う必要が生じることがあります。婚姻費用の額は、夫婦双方の収入や子どもの年齢・監護状況などを踏まえ、算定表を参考に検討されることが一般的です。
Aさんは毎月一定額の送金を続けていました。支払いを一方的に止めると婚姻費用を請求される可能性があるため、離婚条件がまとまるまでは、現在の支払状況と双方の収入を踏まえて対応する必要があると説明しました。
ご相談後の対応
初回相談後、Aさんは、財産資料などを確認したうえで再度相談されました。Aさんは、まず弁護士を通じて妻へ離婚条件を提示し、協議による解決を目指すことを希望されました。妻が条件に応じない場合には、離婚調停へ進む可能性があることも確認しました。
再相談時には委任契約の内容を説明し、委任状等を作成しました。今後は、別居の経緯や財産分与の基準時に関する事情を整理するとともに、双方の財産状況を確認し、離婚条件の提示に向けて準備を進める方針としました。
担当弁護士の所感
長期間別居している夫婦であっても、別居が始まった事情や、その後の生活費の負担、夫婦間の交流状況によっては、財産分与の基準時が明確でない場合があります。単に別居開始日だけで判断せず、夫婦の経済的な協力関係がいつ終了したのかを具体的に確認することが重要です。
また、退職金や有価証券など金額の大きい財産がある場合には、基準時をどこに置くかによって分与額が大きく変わる可能性があります。相手方へ条件を提示する前に、夫婦双方の財産資料をそろえ、対象財産と評価額を整理しておく必要があります。
離婚すること自体について合意できていても、財産分与、婚姻費用、年金分割などの条件が定まらなければ、話合いが長期化することがあります。直接の話合いが進まない場合や、財産の整理が難しい場合には、早い段階で弁護士へ相談することをお勧めします。










