ご相談者様の状況

- 相談者:Aさん(50代男性・会社員)
事案
Aさんのお父様が亡くなり、Aさんとお姉様の2名が相続人となりました。
お父様の遺産には、複数の不動産、預貯金、株式などの有価証券、生命保険などが含まれていると考えられました。
Aさんとお姉様との間では、基本的に遺産と債務を2分の1ずつ取得・負担することについて話ができていました。また、2件の自宅不動産についても、それぞれが1件ずつ取得する方向でおおむね意見が一致しており、相談時点で大きな争いは生じていませんでした。
しかし、お父様より先に亡くなったお母様名義の定期預金も新たに見つかり、この預金については、お母様の相続手続が終わっていなかったため、お母様の相続とお父様の相続を続けて整理する必要がありました。
Aさんは遠方にある金融機関などでの手続にも負担を感じており、遺産の調査、遺産分割協議書の作成、相続税申告、相続登記、預貯金や株式の解約・名義変更まで、まとめて専門家へ依頼したいと考え、弊所へ相談にいらっしゃいました。
※本記事に掲載している「相談時にお伝えした内容」は、ご相談時に確認できた事情や資料を前提とするものであり、当事務所が本記事をご覧の方の個別の事案について法的な見解を示すものではありません。事情によって判断や結論が異なる場合がありますので、具体的な事案については弁護士へご相談ください。
相談時にお伝えした内容
1 まず遺産の全体像を確認する必要があること
Aさんとお姉様との間では、遺産を2分の1ずつ取得するという大まかな合意がありました。
しかし、遺産分割協議書を作成するためには、その前提として、どのような遺産と債務があるのかを確認する必要があります。
本件では、不動産、預貯金、株式、生命保険など複数の財産がありました。また、お父様が契約していたサービスやクレジットカードの支払、税金などの債務が残っている可能性もありました。
そこで、不動産の固定資産評価証明書や登記事項証明書、金融機関の残高証明書、証券会社の取引・残高資料、保険関係の資料などをそろえ、遺産と債務の全体像を確認してから、具体的な分け方を決める必要があると説明しました。
2 お母様名義の定期預金について
本件では、お父様より先に亡くなったお母様名義の定期預金が見つかっていました。
この預金は、名義がお母様のままであるからといって、今回のお父様の相続と切り離して考えられるとは限りません。
お母様が亡くなった時点で、お母様の相続人が預金を相続しています。その後、その相続人の一人であるお父様が亡くなったため、お母様の相続においてお父様が取得した権利も、原則としてお父様の相続財産に含まれます。
そこで、お母様とお父様、それぞれの相続関係を確認し、二つの相続を順番に整理する必要があることを説明しました。
3 遺産分割協議書の作成について
遺産と債務の調査、お母様の相続の整理を行った後、Aさんとお姉様の合意内容に基づいて遺産分割協議書を作成することになります。
本件では、2件の不動産をそれぞれ1件ずつ取得し、そのほかの財産や債務を原則として2分の1ずつ取得・負担する方向で話が進んでいました。
もっとも、不動産の価値や預貯金・株式の残高によっては、単純に財産を分けるだけでは、取得額が同じにならない可能性があります。その場合には、預貯金の配分を調整したり、一方が他方へ代償金を支払ったりする方法も検討します。
なお、弊所がAさんから依頼を受ける場合、弁護士はAさんの代理人となります。お姉様との間に現時点で争いがない場合でも、双方の代理人として利害を調整する立場になるものではないことを説明しました。
4 相続税申告との連携について
本件では、不動産が複数あり、株式だけでも相当額に上ると見込まれていたため、相続税申告が必要となる可能性がありました。
遺産分割の内容によって、各相続人が納付する相続税額や、利用できる税務上の制度が変わることがあります。そのため、遺産分割協議書を作成してから税理士へ相談するのではなく、分割内容を決める段階から税理士と連携することが重要です。
そこで、本件では、弁護士が遺産調査、遺言書の確認及び遺産分割協議書の作成を行い、当リーガルグループ内の税理士が相続税申告を担当する形で進めることが可能であると説明しました。
また、不動産の相続登記についても、グループ内の司法書士と連携して対応できることを案内しました。
5 預貯金や株式の解約・名義変更について
遺産分割協議が成立した後は、協議書の内容に基づき、預貯金の解約、株式の移管・売却、不動産の名義変更などを行います。
これらの手続は相続人自身で行うこともできますが、金融機関や証券会社ごとに必要書類や手続方法が異なり、複数の窓口へ連絡しなければならないことがあります。
弊所では、別途手数料が必要となりますが、他の相続人からも手続に必要な委任状などをいただくことにより、遺産分割成立後の預貯金等の解約・払戻手続を代行できる場合があります。
Aさんには、まず遺産調査と遺産分割協議を進め、その後、どの手続をご自身で行い、どの手続を弊所へ依頼するかを選択できることを説明しました。
担当弁護士の所感
本件では、相続人間に大きな争いはなく、遺産の分け方についても、おおむね方向性が決まっていました。
しかし、「相続人同士で揉めていないから、手続は簡単」とは限りません。
本件には、複数の不動産や金融資産、先に亡くなった方の名義のまま残された預金など法的・税務的な確認が必要な事情が複数ありました。
このような案件で、遺産の一部を見落としたまま遺産分割協議書を作成したり、税務上の影響を確認せずに分け方を決めたりすると、後から協議書の作り直しや追加の手続が必要になることがあります。
また、弁護士、税理士、司法書士へ個別に相談する場合、それぞれに同じ事情を説明し、資料を提出しなければならず、手続の順序や担当範囲が分かりにくくなることもあります。
本件のように、相続税申告が見込まれ、遺産調査や不動産の相続登記、金融資産の解約などをまとめて行う必要がある場合には、弁護士、税理士、司法書士が連携して進めることで、遺産分割から相続税申告、名義変更までの流れを整理しやすくなります。
なお、相続人間で既に争いが生じている場合には、相手方との遺産分割交渉を弁護士へ依頼することができます。争いが生じていない場合でも、本件のように相続税申告を含む複数の手続を一体的に進める必要があるときは、対応できる場合があります。
相続財産の種類が多い方、過去の相続手続が終わっていない方、相続税申告が必要か分からない方は、ご自身で財産の解約や名義変更を進める前に、一度ご相談ください。










