ご相談者様の状況

- 相談者:Aさん(30代女性)
- 婚姻期間:約10年
- 子ども:なし
- 別居期間:相談時点で約1か月
相談内容
Aさんは、夫と約10年間の婚姻生活を送っていましたが、夫からの言葉に萎縮し、常に顔色をうかがいながら生活することに疲れ、実家へ戻って別居を始めました。
Aさんには持病があり、夫婦で子どもを望んでいたため、治療方法を変更するなどして体調の改善に努めていました。
しかし、夫から、子どもができないのはAさんのせいであり、病気を治そうとする努力が見られないという趣旨の発言をされました。Aさんは、自分なりに治療を続けてきたにもかかわらず、その努力を認めてもらえないことに強い苦痛を感じました。
もっとも、Aさんは夫に離婚の意思を直接伝えておらず、夫婦間では離婚についての話合いも行われていませんでした。
夫から強く言われると言い返せなくなるため、直接のやり取りを避け、弁護士に間に入ってもらいたいと考えていました。
そこでAさんは、離婚に向けてどのように進めればよいか、夫へどのような請求ができるかを確認するため、弊所へ相談されました。
※本記事に記載している「相談時にお伝えした内容」は、ご相談時に確認できた事情や資料を前提とするものであり、当事務所が本記事をご覧の方の個別の事案について法的な見解を示すものではありません。事情によって判断や結論が異なる場合がありますので、具体的な事案については弁護士へご相談ください。
相談時にお伝えした内容
1 離婚に向けた進め方
Aさんは夫と直接話し合うことに強い不安を感じていたため、本件では、弁護士を代理人として離婚協議を行う方法のほか、家庭裁判所へ離婚調停を申し立て、調停委員を介して話合いを進める方法が考えられることを説明しました。
一方、夫が離婚に同意せず、調停でも合意できない場合には、離婚訴訟で法律上の離婚原因が認められるかが問題となります。
相談時点では別居を開始してから約1か月であり、夫の発言や婚姻生活の状況を裏付ける資料も十分には確認できていませんでした。
そのため、直ちに裁判で離婚が認められると断定することはできず、まずは調停で夫の意向を確認しながら、離婚条件を協議する方法を検討することをお伝えしました。
2 婚姻費用
夫婦には、別居中であっても、それぞれの収入等に応じて生活費を分担する義務があります。本件では夫婦の収入差があったため、Aさんから夫へ婚姻費用を請求できる可能性があることを説明しました。
もっとも、具体的な金額は双方の収入、住居費の負担状況、夫名義のクレジットカードや携帯電話料金の利用状況などによって変わります。
実家で生活していることのみを理由に当然に請求できなくなるものではありませんが、本件での適正額は、資料を確認したうえで検討する必要があることをお伝えしました。
3 財産分与
夫婦が婚姻中に協力して形成した財産は、夫婦いずれの名義であっても財産分与の対象となる可能性があります。本件では、夫名義の土地・建物、住宅ローン、預貯金、車、退職金、積立投資などについて、別居時点を基準に内容を整理する必要があることを説明しました。
特に自宅については、現在の不動産価値と住宅ローン残高を確認しなければ、財産としての価値や分与方法を判断できません。
そのため、不動産の登記事項証明書、査定書、住宅ローン残高が分かる資料を取得するとともに、どちらが取得を希望するのか、売却を検討するのかも整理する必要があることをお伝えしました。
4 夫の発言等を理由とする慰謝料
夫からの発言によりAさんが精神的苦痛を受けていたとしても、そのことから直ちに離婚慰謝料が認められるとは限りません。
本件では、発言の内容、頻度、継続期間や、婚姻関係に与えた影響を具体的に確認し、資料によって裏付けられるかが重要であることを説明しました。
5 年金分割
Aさんには、婚姻期間中に第3号被保険者であった時期がありました。
そのため、離婚後の年金分割を検討するため、年金事務所から年金分割のための情報通知書を取得し、対象期間等を確認することをお伝えしました。
6 別居後の契約名義や連絡方法
別居後も、夫名義の携帯電話や家族カードを使用していたため、婚姻費用を請求する前に、今後の生活に必要な契約を自分名義へ切り替え、夫の判断で利用を止められても困らない状態を整えることをご案内しました。
また、夫との直接の連絡が精神的な負担となる場合には、離婚調停や代理人を通じて連絡する方法があることを説明しました。
ご相談後の対応
Aさんは、夫と直接協議するよりも、家庭裁判所の調停手続を利用して離婚の話合いを進めたいと希望されました。
弊所では、夫婦の財産関係を確認するため、不動産の登記事項証明書を取得し、Aさんには年金分割のための情報通知書、預貯金や積立投資、退職金などに関する資料を準備していただくことになりました。
そのうえで、婚姻費用を請求しながら離婚調停を申し立て、夫の意向を確認するとともに、財産分与などの離婚条件について協議を進める方針で、弊所が対応をお引き受けすることになりました。
担当弁護士の所感
配偶者からの強い言葉や否定的な発言が積み重なると、相手と直接話し合うこと自体が大きな負担となる場合があります。
相手を前にすると自分の意向を十分に伝えられない場合には、家庭裁判所の調停手続や弁護士を利用することにより、直接のやり取りを減らしながら離婚条件を整理することができます。
また、離婚を希望して別居を始めた場合には、離婚そのものだけでなく、別居中の生活費、夫婦の財産、住宅ローン、年金分割、携帯電話やクレジットカードの契約名義など、生活に関わる複数の問題を同時に整理する必要があります。
相手と話し合うことに不安がある方は、別居後の生活が不安定になる前に、早めに弁護士へ相談することをお勧めします。










