慰謝料請求の方法は、内容証明郵便などを用いた文書による通知、電子メールやメッセージアプリなどによる通知、電話による口頭の通知等、多岐にわたります。
慰謝料請求問題は、初期の対応が非常に重要です。
初期の対応に失敗すると、請求者(交際相手の配偶者)がより感情的になり、事態の悪化につながります。
以下、想定される請求パターンごとに、対応を考えてみましょう。
慰謝料の請求者から直接あなたに連絡があり、あなたとの面会を求めてくるケースが多くあります。
安易に請求者との面会に応じてしまうと、会話を録音されてしまったり、関係者を含めた複数人から責められ、強引に誓約書等にサインさせられる・・・などこちらに不利な状況に陥る危険があります。
一度不利な状況に陥ってしまうと、後になって覆すことが困難な場合もあります。請求者からコンタクトがあった場合は、まずは弁護士へ対応を相談した方がよいでしょう。
請求者本人や、その代理人である弁護士・司法書士から、ご自宅に連絡文書(内容証明郵便)が届くことがあります。
連絡文書には、請求金額とともに回答期限が記載されている場合が殆どです。
回答期限は、あくまで請求者の私的な要求にすぎないため、法的に回答すべき義務が生じるわけではありません。
しかし、文書が届いたということはこちらの住所が把握されているということですから、何らの返答もしない場合は、話し合いの余地がないものとみなされ、訴訟を起こされてしまう可能性が高いでしょう。
連絡文書を受け取った場合、まずは文書に記載された内容が、法的に妥当なものといえるかを検討する必要があります。具体的には、請求者が主張する不貞行為が事実なのか、慰謝料の金額が妥当な範囲といえるか等です。
請求者の主張する不貞行為がそもそも事実無根である場合は、慰謝料を支払う義務はないという態度で、毅然と反論をする必要があります。仮に不貞行為が事実であったとしても、請求金額が裁判例と比較して不当に高額である可能性もあります。
検討すべき事情は、事案によって様々ですので、法的観点から請求の妥当性を検討できる弁護士にご相談いただいた方が無難でしょう。
慰謝料請求に応じることができず、合意ができない場合や、不貞行為の事実関係について双方の認識が大きく異なる場合には、裁判手続を利用して解決を図る場合があります。
裁判所から書類(呼出状)が届いた際は、適切に対応しないと、慰謝料請求について請求者の主張を全面的に認めるという判決が下される可能性があります。
また、裁判所からの書類を受領しない場合、あなたの職場に書類が送達されてしまう可能性があります。相手に勤務先を知られている可能性がある場合には、書類を受領した上で、弁護士へご相談されることをお勧めします。
慰謝料請求を受けた場合、請求者の主張する事実が全て正しいとは限りません。事実関係に対するあなたの認識を整理し、相手と認識が異なる部分については、きちんと反論を行うことが重要です。
以下、慰謝料請求を受けた場合に考えうる反論について紹介します。
・不貞行為の事実関係に争いがある場合
不貞行為の事実関係に争いがあれば、請求者側が、不貞行為の事実があったことを立証する責任があります。事実立証のための証拠が不十分であれば、裁判所は不貞行為の事実を認めず、慰謝料請求を棄却する可能性があります。
・不貞行為時に、交際相手が既婚者だと認識していなかった場合
不貞行為とは、既婚者と肉体関係を持つこととされているため、あなたが交際当時、交際相手が既婚者であると知らず、既婚者であると知ることもできなかったような場合、故意がなかったものとして慰謝料請求が認められない可能性があります。
例えば、交際相手が独身であると嘘をついてあなたと交際していたり、お互いの素性をよく知らない状況で肉体関係を持ったケース等が考えられます。
・不貞行為時に、相手の夫婦関係が既に破綻(悪化)していた場合
慰謝料請求は、配偶者の不貞行為によって円満な夫婦関係が壊され、精神的苦痛を受けたことを根拠に行うものですから、不貞行為があった時点で、請求者の夫婦関係が既に破綻し、また破綻に近い状態まで悪化していた場合は、そもそも慰謝料の支払い義務が生じないか、減額できる可能性があります。
夫婦関係の破綻を基礎づける事情としては、長期間にわたり夫婦が別居していたこと等が挙げられます。その他、相手の夫婦関係が良好でなかったことを示す事情も、慰謝料の減額要素として考慮される場合があります。
・不貞行為から一定の時間が経過していた場合
慰謝料請求の原因となった不貞行為から時間が経過し、時効が完成していると思われる場合には、時効による損害賠償請求権の消滅を主張し、相手に反論をしていくことが考えられます。
ただし時効が中断される事情がある場合、例えばあなたが慰謝料の請求を受け慰謝料を支払う意思はある等と答えていた場合や、実際に慰謝料の一部を支払っていたような場合は、その時点から3年が経過するまで時効の完成が遅れることになるため、注意が必要です。
・請求者が配偶者(交際相手)から既に慰謝料の支払いを受けていた場合
慰謝料の請求は、既に支払いがされている部分については請求を行うことができません。請求者が、不貞行為が原因で既に配偶者(交際相手)と離婚した場合、配偶者から慰謝料を受け取っていれば、あなたに対する慰謝料請求を減額できる可能性があります。
交際相手が不貞行為後に離婚した場合には、配偶者(交際相手)の慰謝料の支払い状況について確認しておくことが重要です。
・相手が配偶者(交際相手)と離婚するまでに至っていない場合
不貞行為が原因で相手が離婚するまでに至っていない場合には、相手に与えた精神的苦痛の程度が(離婚に至った場合と比べて)小さいことを理由に、慰謝料を減額できる可能性があります。
相手から、あなたの家族や職場に不貞行為の事実を暴露する等と脅されている場合は、弁護士から相手に対し、あなたの名誉を棄損するような行為をしないよう警告文を送付することが考えられます。
また、あなたの代わりに弁護士が交渉窓口となることができますので、相手からの連絡によって、あなたの家族や勤務先等へ、不貞行為の事実が知られてしまうリスクを減らすことができます。
また、請求者と示談を行う際は、無関係の第三者に不貞行為の事実を暴露しないことを約束させたり、仮に約束が破られた場合のペナルティを示談条項に入れ込むといった交渉を行うことが重要です。
不貞行為の慰謝料請求を受けた場合は、金額や支払方法に関する条件にとどまらず、相手の感情的な部分に配慮しながら対応する必要があるため、不貞慰謝料請求の問題に精通した弁護士に依頼することをお勧めします。
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