モラハラ・DVと離婚

モラハラと離婚

モラハラとは

モラハラとは、提唱者のマリー=フランス・イルゴイエンヌによると、「言葉や態度で相手の人格を繰り返し執拗に傷つけ、その恐怖や苦痛によって相手を支配し、思い通りに操る暴力のこと」をいいます。

モラハラとは、分かっているようで分からない概念で、離婚相談の際、配偶者からモラハラを受けたとおっしゃる方が間々いらっしゃいますが、その内容は具体的にお話を伺うと様々です。

そのため、離婚相談の際に、モラハラを受けたと仰る方からは、離婚について的確な道筋を立てるため、具体的な内容をお伺いしています。

具体的には、言葉であればそのの文言、態度であればそれがいつどのように相談者に向けられたのか、それらの期間・内容をお伺いします。

そのため、モラハラを理由に離婚を検討されている方には、相談に来る際には、その内容を整理してご来所頂けると、より的確なアドバイスができます。

具体例から学ぶモラハラと離婚

モラハラと離婚に関する説明は、どうしても抽象的なものとなりますので、2つの裁判例を説明することで、裁判所では、どのようなものがモラハラとして扱われ、どのような判断がなされたかを説明させて頂きます。

高齢になり生活力を失った夫を軽んじ、妻が配慮を欠いた行為をするようになったことにつき、婚姻関係の破綻を認めた事例(大阪高判H21.5.26)

〈具体的内容〉

  • 80歳と高齢になり、収入が減少した夫に対し、持病の手術による退院後一人で食事をさせた
  • 仏壇に祀られた先妻の位牌を無断で長男の実家に送付した
  • 夫の生活歴が記録されたアルバム10数冊を無断で焼却した
  • 夫の作成した先祖の過去帳の処分を無断で寺に依頼した

〈事例1の分析〉

この事案では、上述の4つの行為と婚姻関係破綻との因果関係が問題となりました。
そして、夫の生活力が弱まった時期、妻の配慮を欠いた行為が始まった時期、夫が別居を開始した時期が重なったことから、妻の一連の行為により、夫婦の信頼関係が失われ、修復困難な状態に至ったとして婚姻関係の破綻が認められました。

夫による一連の行為が、夫婦の日常生活や通常の夫婦喧嘩において受任すべき限度を超えたものであり、婚姻関係の破綻を認めた事案(大阪地判H26.12.3)

〈具体的内容〉

  • 妻を知人に紹介する際、「風俗嬢だったときに店で知り合った」と虚偽を言いふらした
  • 妻の懇願を無視して、家計を顧みず浪費を繰り返した
  • 過剰に飲酒し、大声を出したり、テーブルをひっくり返すなどした
  • 長男を連れて別居後、深夜近所の家のシャッターを鳴らしたり、長男の同級生の自宅に上がり込んだり、長男の通っている学校に怒鳴り込んだりした

〈事例2の分析〉

この事案では、上述の複数の行為(モラハラ)から婚姻関係が破綻していると認定した事案です。
一つ一つの行為では、破綻に対する影響は小さくとも、複数の事実を積み上げることができれば破綻の認定が得られることを示しています。
そのため、配偶者のモラハラを理由として、婚姻関係の破綻の認定を得るには、配偶者の一つ一つの行為を証拠化する必要があるといえます。

DV

配偶者(夫・妻)の暴力に対する対処法

配偶者の暴力に対し、現在、離婚の意思をもっているわけではないが、何らかの対処をしなければならないと頭を抱えて相談にいらっしゃる方がみられます。

  

そこで、配偶者の暴力に対し、離婚の方法以外でどのような対処法があるかをご説明します。

別居

まず、身体の安全を確保するため、別居するという方法が考えられます。
具体的には、新たに賃貸住宅を借りる、実家に身を寄せるという方法があります。
自分に収入がなく、日々の生活に窮してしまう場合には、別居後、婚姻費用を請求することが考えられます。

しかし、暴力の被害者が、その加害者に対して直接、婚姻費用を請求することが大きな困難を伴います。

このような場合には、直接相手方と接触しない、婚姻費用を回収の確実性を上げるという意味で弁護士を間に挟むことが重要となります。

DV保護命令の申立て

(1)概要

DV保護命令とは、DV防止法に基づいて、裁判所が配偶者から暴力を受けた被害者の申立てにより、配偶者に対して保護命令を発令し、被害者が配偶者からさらに暴力受けることにより生命又は身体に対する危害が加えられることを防止するものです。

(2)保護命令の種類

主な保護命令の種類は次の2種類となります。
このほかにも、子どもや被疑者の親族等への接近禁止命令、電話等の禁止命令があります。

  • 被害者等への接近禁止命令

    命令の効力が生じた日から起算して6カ月間、被害者等の身辺につきまとい又はその通常所在する場所の付近をはいかいしてはならないこと命ずるものです。
    これにより、被害者の尾行、被害者の住居や勤務先等に理由なく近づくことが禁止されます。
    また、被害者へのやむを得ない場合を除いての連続した電話、メールの送信等も禁止行為の対象となります。

  • 退去命令

    命令の効力が生じた日から起算して2カ月間、被害者とともに生活の本拠としている住居から退去すること及びその住居の付近をはいかいしてはならないことを命ずるものです。
    これは、暴力を振るった配偶者に被害者の居住している場所から一時的に立ち退かせるものです。この間に、新居を見つけ、引っ越しなどをすることが考えられます。

(3)保護命令の申立方法

保護命令の申立ては、管轄の地方裁判所へ申立書を提出して行います。

申立書には、配偶者暴力相談支援センターや警察等に相手方から暴力を受けたことについて相談した事実を記載する必要があります。

そのため、申立書の作成に先立って、同センターや警察に相談をしておく必要があります。

相談をしていない場合には、相手方からの暴力を受けた状況等の所定の事項を記載した宣誓供述書(公証人の前でその記載が真実であると宣誓した上で署名・捺印をした証書)を添付する必要があります。

また、申立手数料と郵便切手がかかります。

したがって、保護命令の申立てを考える場合には、早急に上述の機関に被害の相談をすることが重要です。

(4)保護命令の審理

申立書を裁判所に提出すると、裁判官が、原則として申立人と相手方を別々に呼び出して意見を聴取します。

裁判官が、聴取を踏まえて、被害者等の生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいと判断した場合には、保護命令が命じられます。

まとめ

配偶者の暴力から逃れるには、離婚という大きな決断しかないと考え、頭を抱えて現状を放置してしまっている方が多くいらっしゃいます。

しかし、上述の法律上の手続と弁護士を介しての交渉を組み合わせることで、配偶者の暴力から逃れつつ、改善に向けた交渉、または離婚に向けた準備をすることは十分に可能です。

離婚をしようと決断する前でも全く構いません。暴力がエスカレートし、深刻な状況になる前にご相談ください。

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