養育費とは、未成年の子どもが生活するために必要な費用をいいます。
子どもを扶養する義務は両親にあるため、両親が離婚した場合であっても、双方がその経済力に応じて子どもの養育費を分担する必要があります(民法766条、877条1項)
養育費を請求する場合、まずは、相手方に直接請求し、支払いを求めます。
当事者間で協議により養育費の金額・支払方法について合意ができる場合には、その金額として構いませんし、一つの基準として、裁判所が公表している算定表を利用する方法があります。
算定表に、当事者の年収、未成年者の年齢や人数を当てはめることで、基準となる養育費の金額を算出することができます。
当事者間で、協議がまとまらない場合は、管轄の家庭裁判所に対して、養育費請求調停を申し立てます。
調停手続では、調停委員が、当事者の年収や未成年者の年齢や人数等の一切の事情を当事者双方から聴取し、助言を行うなどして、養育費の額について合意の形成を図ります。
その際には、上述の算定表が利用します。
調停手続となった場合、基本的には、算定表に準じた養育費の算出がなされます。
そして、算出された金額と異なる金額による合意を望む場合には、それを望む当事者が、具体的な事情について主張し、証拠を示すことが求められます。
調停手続において、当事者の合意が図れない場合、審判手続に移行し、調停で主張された一切の事情を考慮して、裁判官が審判を行い、養育費の額を決定します。
裁判官の審判に対し、不服がある場合には、2週間以内に、高等裁判所に対して、即時抗告を行います。
お子さまがいらっしゃる方の離婚で、よくご相談されるのが、将来のお子様の学費や予備校の費用について、どこまで負担を求めることができるのかという問題です。
そこで、本稿では、養育費の範囲についてご説明します。
離婚後のお子様の養育費は、お子様の数と年齢を裁判所が公開している養育費の算定表にあてはめることで算出され、義務者はその範囲でのみ養育費を負担する義務を負います。
離婚後のお子様の養育費は、お子様の数と年齢を裁判所が公開している養育費の算定表にあてはめることで算出され、義務者はその範囲でのみ養育費を負担する義務を負います。
この算定表は、公立学校・公立高等学校に関する学校教育費を考慮しており、多額な費用を要する予備校やクラブ活動の費用については考慮していません。
したがって、権利者が、私立学校等の費用の負担を希望する場合には、調停の場で負担するように積極的に求める必要があります。
その際には、権利者や義務者の学歴、収入やお子様のそれまでの実績や意向を義務者に伝え、私立学校へ進学させる、または予備校へ通わせる必要性等を伝え、理解を求めることが重要です。
特に、すでに私立学校へ進学している、お子様が進学の意向を示しているなど、ご両親の離婚が原因となり、お子様の進路や環境を変化させてしまうことは避けるべきであることを伝えることも肝要です。
もっとも、義務者には、お子様の私立学校等についての費用の負担義務はありませんので、その点を理解したうえで、交渉してください。
海外留学等の費用も養育費に含まれ、権利者と義務者が負担する養育費の範囲内で賄われるものとなります。
したがって、義務者が負担する意思を有する場合にのみ、例外的に分担してもらうことができます。
そのため、留学の必要性等を義務者に説明し、理解を求める必要があります。
離婚調停の場で養育費を支払う旨を定めても義務者が毎月支払いを履行せず、生活費に窮しているという相談を多々耳にします。
そこで、本稿では、養育費を払ってもらえない場合の対処法をご説明します。
義務者と(LINEなどを含め)話し合いができる環境がある場合は、養育費を支払ってもらえないと生活に困るということを伝え、支払いを求めましょう。
当事者同士の交渉で任意の支払いを期待することが困難な場合には、(2)の履行勧告という手続をとることが考えられます。
履行勧告とは、義務者が養育費を支払わない場合に、家庭裁判所から養育費を支払うように勧告する手続です。
履行勧告をしてもらうには、家庭裁判所に履行勧告を行ってもらいたい旨を申し出る必要があります。申出の方法は、電話や口頭で足り、費用はかかりません。
履行勧告の申出がなされると、通常、家庭裁判所調査官が申出をした人から事情を聴き、義務者に書面を送付したり、事情を聴取するなどします。
しかし、履行勧告には強制力はないため、裁判所からの連絡等を義務者が無視した場合には、支払を強制することはできません。
履行命令とは、義務者が養育費の支払いを怠っている場合で、相当と認めるときは、権利者の申立てにより義務者に対して、相当の期限を定めてその義務を履行すべきことを命ずる審判(履行命令)をする手続です。調停のほか、調停に代わる審判において定められた義務の履行についても、申立てをすることができます。
申立ては、家庭裁判所に対して、書面で行う必要があり、口頭や電話で行うことはできません。また、手数料として、500円がかかります。
申立てがなされると、裁判所は、義務者の陳述を聴いて、履行勧告をすべきか判断をします。
履行命令によって、義務の履行が命じられたにもかかわらず、正当な理由なくその命令に従わない場合ときは、10万円以下の過料に処せられる可能性があります。
強制執行とは、義務者の財産を差し押さえて、処分できないようにしたうえで、支払を強制する手続です。
義務者名義の預貯金や義務者がサラリーマンの場合には、その給与やボーナスを差し押さえることが一般的です。
強制執行を行うためには、債務名義の取得、執行分付与の申立て、送達証明書の取得が必要となります。
関連ページ:岡崎事務所サイトブログ「養育費の強制執行について」▶
交渉や履行勧告の申出、履行命令の申立てについては、ご本人でも何とか行うことは可能な手続であると思われます。
しかし、(4)の強制執行については、書類の作成や申立てに専門的な知識や多くの手続が必要になりますので、弁護士に相談することをおすすめします。
また、いずれの手続でも、手続に着手してからすぐに支払われるわけではないため、養育費の不払いがあった場合には、生活に不安を生じさせないよう、早め早めに手続を進めることが重要です。
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