第四回は、相続財産の仮払い制度についてご説明します。
被相続人の預貯金も遺産分割の対象となるため、相続人は単独で、銀行等に対し、自己の持分分の預金を引き出すことはできません。
そのため、葬儀費用や相続債務の返済など速やかな支払が必要なものに対しても被相続人の財産から支出することが困難になりました。
そこで、平成30年の相続法改正では、一定の要件の下、相続人が単独で預貯金を引き出すこと認める規定を新設しました。
仮払いが認められる範囲は、相続開始時の預貯金債権の3分の1に共同相続人の相続分を乗じた金額です。
上述の預貯金債権の割合は、個々の預貯金債権ごとに判断されます。
また、新民法909条の2では、1つの金融機関に対し、権利行使できる金額を「法務省令で定める額」を限度とすると規定しており、令和2年3月の時点では、同額は、150万円とされています。
以上の説明のみでは、理解しがたい部分もあると思いますので、具体例を用いてさらに詳しくご説明します。
【具体例】
NS銀行の普通預金に600万円、定期預金に300万円あり、相続人が配偶者と子供2人であり、配偶者が預金を仮払い制度により引き出そうとした場合を考えます。
上述の例の場合、配偶者の相続分は2分の1であるため、配偶者は、普通預金について100万円、定期預金について50万円の範囲で払戻しを受けることができることになります。
相続人が仮払い制度により払い戻しを受けた預貯金については、遺産の一部分割により取得したものとして、遺産分割で精算します。
令和元年7月1日
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