第六回では、相続人以外の者が特別の寄与を行った場合、遺産分割にどのような影響を及ぼすのかご説明します。
改正前民法にも、「特別の寄与(貢献)」をした者に、寄与の度合いに応じて相当額の財産を取得させるという寄与分の制度はありました。
しかし、寄与分の制度は、相続人にのみ適用されるため(民法904条の2)、相続人以外の者が被相続人の療養看護等の特別の寄与をしても、その者は、遺産分割手続の中で、寄与分を主張したり、財産の分配を請求することはできませんでした。
そのため、従前は、そのような者の寄与については関係する相続人の寄与分の中で考慮することで、相続人以外の者の貢献を遺産分割に反映していました。
もっとも、当該相続人が被相続人よりも先に死亡した場合には、反映することができないなど、相続人以外の者の特別の寄与の遺産分割への反映には限界がありました。
そこで、平成30年の相続法の改正では、相続人との実質的公平を図るため、特別の寄与の制度(新民法1050条)が創設され、相続人以外の被相続人の親族が、特別の寄与をした場合には、相続人に対して、特別寄与料を請求できるようになりました。
被相続人の親族に限定されます(新民法1050条1項)。
しかし、相続人、相続放棄をした者(民法939条)及び相続人の欠格事由(民法891条)に該当する者、又は廃除により相続権を失った者は除外されます(新民法1050条1項かっこ書)。
請求の相手方は、相続人と包括受遺者です(新民法1050条1項)。
相続の開始後すなわち被相続人の死亡後です(新民法1050条1項)。
特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6カ月又は相続開始の時か1年です(新民法1050条2項ただし書)。
相続人が複数いる場合、各相続人に対して請求できる金額は、特別寄与料の額に法定相続分又は指定相続分を乗じて算出した額が上限となります。
特別寄与料は、第一次的には当事者間の協議によって決定されるため、特別寄与者が相続人に対して請求をして、金額の交渉を行うことになります。
当事者間で協議が調わないとき又は協議をすることができないときは、家庭裁判所に対し、協議に代わる処分を請求することができます(新民法1050条2項)。
寄与分が認められるためには、「特別の寄与」が必要とされ、単なる寄与では認められないことになっています。
そして、何が「特別の寄与」に当たるかは、個別の事情によるので、一概に言うのは困難ですが、基準としては、通常期待されるような程度の貢献を超える貢献が必要であるとされています。
そのため、親族として、身の回りの世話をしたというだけでは、「特別の寄与」には認められないと考えられます。
「特別の寄与」の主張は、実務上も、難易度の高いものであり、特別寄与料の請求を考えた場合は、専門家である弁護士に相談することが重要です。
令和元年6月30日以前に開始した相続については、旧民法が適用されるため、特別寄与料を請求することはできません。
令和元年7月1日
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